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入れ替わった男の、ダンジョン挑戦記
誕生、前代未聞の冒険者
第二話
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『どうやら慣れてきたようだ。』

しばらく試していると、どことなく楽しそうな声が。

『アーティファクトから発する炎で移動、防御、攻撃、すべてが高水準。』

ただ好き勝手にやっていただけだが、大体掴めた気はする。まず炎の噴射。グリーヴから出せば高速移動は容易だし、ガントレットから出せば熱線すら出せる。

流石に現実に影響はないとは言え、熱線で校舎の奥に巨大な風穴を開けたのには冷や汗が出たが。勿論、噴射のベクトルを変えれば、拳や蹴りの威力も強大だ。眼前に炎を発生させることも出来たので、炎で壁を作り、攻撃を防ぐ、なんてことも。

「だが熱い。信じらんないほどに。」

炎を使う宿命か、体が凄く熱にさらされる。使い方を誤れば、黒焦げになるのは僕の方、とは笑えない。

『どのアーティファクトにもリスクはある。上手く付き合いたまえ。』
「簡単に言って…!」

他人事の様な声に憤るが、考えてみれば、声は最初に得た者を導く存在と言った。つまりはチュートリアルのナビゲーターみたいなもの、当事者ですらないのだから、他人事で当然なのだろう。

「うん、大分分かったぞ、このアーティファクト。親しみを込めて、『ホット・ペッパー』と呼ぶとしよう。」

正式な名称が有るのかは定かではないが、愛着を付けるためにも、ニックネームを決める。命名の理由は何となく、だ。

『…長くアーティファクト使いに出会ってきたが、その様な珍妙な名で呼ぶのは君が初めてだ。』

声が呆れている?馬鹿な、誰も自分の相棒になる武器に、ニックネームを付けないと?

『まあ、君もアーティファクト使いに足を踏み入れた。今後は、自ら考え、自分が正しいと思う道を進むがいい。新たな使い手、楠英司よ。君の未来が輝かしいことを願う。』

言うだけ言って、眼前にジャージの教師が現れた。チュートリアルの時間が終わったらしい。

「楠、後は家で御両親と相談しろ。今後の身の振り方をな。」
「あ、はい。」

すぐに教師から解放された。しかし、受験に失敗して身投げって…。滑り止めくらい受けようよ、この世界の僕。

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家と言えば、僕は元々は一人立ちしてアパート暮らしだったが、こっちの僕はまだ学生だから実家だろうと、見覚えあるようで違和感もある道を進む。…何故軒先で防弾チョッキが干してあったりするんだ。

と、ツッコミを胸中で入れながら、懐かしき…になるだろう我が実家に到着。特に感慨もなくドアを開けると。

「この…バカ者がぁ!!」

若くなった親父殿に殴られました。そりゃそうか。自殺未遂だもんなぁ。

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親父に首根っこ掴まれて居間に放り込まれ、母と兄が揃った。…若い。そして美形。
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