2部分:第二章
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ちた地の底から響くような声であった。
それは清明も今まで聞いたことのないような叫び声であった。その声が御所に対して向けられている。清明はそれに対して危惧を感じずにはいられなかった。
「これは一体」
「何故御所を」
「彼等は怨みを飲んで死んでいる」
清明は今しがた従者の一人が言った言葉をその従者に返した。
「これまでの歴史では。皇室においても様々なことがあった」
「そうですね」
「それは」
これについては従者達も知っている。歴史にあるからだ。
「それで御所を怨んでいるのだ。だがそれは」
「それは?他にもあるのですか」
「ある。見よ」
怨霊達を見るように言う。見れば彼等は今度は道長の邸宅がある方を見ていた。そうしてそこに対しても怨みに満ちた声を放っているのだった。
「怨!」
またこう叫ぶ。その声もやはり恐れを抱かずにはいられないものであった。清明もその言葉には内心震えずにはいられなかった。それ程までのものであった。
しかし彼等を放っておくことはできない。彼はここで従者達に対して言うのだった。
「これより道を使う」
「陰陽道をですか」
「そうだ、放ってはおけぬ」
険しい顔になって怨霊達を見据えながら答えるのだった。
「このままでは帝にも道長殿にも災いが及ぶ。それだけはならん」
「確かに」
「それだけは」
「わかったな。では」
懐から札を取り出した。言うまでもなく式神のそれである。それで怨霊達を退治するつもりであった。しかもその数はいつもより多い。
それを使おうとすると不意に怨霊達がこちらに顔を向けてきた。気付かれたのだ。
「お師匠様」
「どうやら我々に気付いたようです」
「恐れることはない」
清明はその真っ赤に燃える無数の目を前にして従者達に言葉を返す。
「恐れるならば死ぬぞ」
「死ですか」
「そうだ。そなた達は動くな」
彼等に対しては迂闊な動きを止めた。
「彼等の相手は私しか出来ぬ。ならば」
怨霊達が動いてきた。ぞっとするような顔と咆哮をあげながら清明に迫る。清明はその彼等に向かって札を投げた。その札達がすぐに鬼となった。尋常でない数の鬼達が怨霊達に向かう。そうしてその手にある爪や牙で次々に襲い掛かるのであった。
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