ある少女の話
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れを聞いてようやく納得した。この季節観光客で溢れ返っているこの白浜でこの静かさは流石に異様に思えたからだ。
暫く僕は海を眺めていた。置かれていた椅子とテーブルに座って海を眺めていた。
ここで昼食をとるのかと思った。しかし僕達は何も持ってはいない。
「あの」
急に彼女が立ち上がった。
「何か」
「お昼になったら屋敷に帰りましょう」
「え、ええ」
またであった。何故か僕の考えを先に言う。やはり不自然であった。
「それまで」
彼女は立ち上がったままで僕に言葉を続ける。
「泳いでも宜しいですか」
「いいですけれど」
僕にそれを止める理由はなかった。
「けれどその服では」
「御心配なく」
彼女はそう答えるとワンピースに手をかけた。そしてその前のボタンを外す。帯を解く。そして下から白いワンピースの水着を着た彼女が姿を現わした。
「もう着ていますから」
「そうだったのですか」
スラリとした体型である。グラマーというものでは決してないが整ったプロポーションをしている。女性らしい体型であった。黒い清楚な髪によく似合っていた。肌も白く、それが尚更その体型を際立たせていた。
「では今から泳いで来ます」
「どうぞ」
断る理由もないのだ。そう答えた。
「僕はここにいますから」
「わかりました」
泳げなくとも何かあれば助けたかった。今は彼女を見守るだけであった。
彼女は海に入った。そして泳いだりその中にはしゃいで楽しんでいた。その顔は少女の顔そのものであった。
(さっきのは気のせいか)
僕はそれを見てそう思った。今見る彼女からは生気が感じられる。
そして安心した。僕は彼女が泳ぎ終え、海からあがるのを待った。持っていたタオルで身体を拭くと彼女はワンピースを着た。そして僕達は洋館に帰った。
洋館に帰ると昼食が食堂に並べられていた。やはり洋食であり、見たところオリーブを使っている。料理は全てテーブルの上に並べられている。今の洋食のマナーではないがこれはこれで趣があった。
「どうぞ」
彼女は僕に食べるように薦めた。僕はそれに従い食べた。
スープの後は野菜、そして魚である。魚はこの白浜でとれたものであろうか。新鮮な生の魚をオリーブや香辛料で味付けしている。白身で美味かった。
それから肉料理である。鳥肉であった。一口食べると鳥より味が濃い。鴨であった。
「如何ですか、鴨は」
彼女は鴨を口に入れた僕に尋ねてきた。
「私は好きなんですけれど」
「美味しいですね」
鴨は何度か食べたことがある。鍋等でだ。嫌いではない。だがこの鴨は今まで食べた鴨の中で最も美味しいものであった。これ程鴨が美味しいとは思わなかった。
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