ある少女の話
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、使用人達は遠慮して。私はいつもこうしてここで一人で食事をとっていたのです」
「そうだったのですか」
それは味気ないことだと思った。僕の家には騒がしいがいつも家族がいる。食卓も賑やかだ。だがこの広い家に一人で食事をするとなるとどうだろうか。その寂寥感は如何程のものであろうか。
だが僕はそれについては何も思わない。他人への同情は好きではない。冷たいと思われるかも知れないが同情や憐れみなぞかえってその人にとって失礼だからだ。
したがってそれは口にも顔にも出さなかった。だが彼女はそれに気付いたようであった。
「あの」
「はい」
僕はその声に顔を上げた。
「私は平気ですから」
「そうですか」
内心ギョッとした。まさか心が見透かされているのでは、と思った。
「一人は一人でいいものですよ」
「はあ」
「好きなことが出来ますから。そうだ」
何かを思いついたようであった。
「朝食の後海に行きませんか」
「海ですか」
「ええ」
生憎僕は泳げない。従って水着なぞは持ってはいない。断ろうかと思った。
「海はお好きですよね」
「ええ、まあ」
それでも見るのは好きである。見るだけなら構わなかった。
「それならご一緒して下さい。そしてそこで海を一緒に眺めましょう」
そういうことなら構わなかった。僕はそれに頷いた。
「はい」
「よかった」
彼女はそれを受けて優しく微笑んだ。その目が垂れる。
「では食事の後行きましょう。楽しみにしていますから」
こうして僕は彼女と共に海に行くことになった。やはり見送りはなく僕は彼女と共に屋敷を後にした。そして二人で海に向かった。
二人並んでいると兄妹か、はたまた恋人同士か。そうも見られるかも知れない。しかし僕はそこにある種の違和感を覚えていた。
(妙だな)
隣にいる彼女に生きた感触を感じなかったのだ。まるで人形が隣にいるようであった。僕は人形が嫌いだ。だからこそこうした感触には敏感なのだ。その人形に似た感触を彼女にも感じていた。
見れば見る程美しい。白いワンピースがよく似合っている。夏の中の一つの風景としても通用する。そうした自然な色合いさえ漂っていた。
だがそれでも生きた感触がなかったのである。彼女からは何か無機質なものを感じざるを得なかった。そしてそれを感じながら道を行くのはやはり不自然であった。
僕は彼女に案内されて海に着いた。そこは誰もいない白い砂浜であった。
「誰もいないね」
僕はその砂浜に着いてそう呟いた。
「ここは私の家の土地になっていますから」
彼女はそれを聞いてそう答えた。
「ですから誰もいないんです。お気になさらずに」
「そうですか」
そ
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