1部分:第一章
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を開けて城の中に入った。
城の中には誰もいない。やっぱり真っ黒な壁や床に真っ赤な絨毯が敷かれている。壁にかけられている絵や立てられている彫像はどれも不気味なやつばかりだ。悪魔だの幽霊だのそんなのばかりだ。そういうのを見ているとここがやっぱり魔王の城なんだって思う。
けれど妙だ。俺は城の中を進むうちにこう思いだした。
「誰もいねえのかよ」
そこだった。何か誰もいないのだ。
「逃げたか?まさかな」
それはないと思った。流石に魔王だ、逃げるなんてことはない筈だ。
「じゃあ一体」
俺は首を傾げながら城の中を進んでいった。罠も何もない。一応それを警戒する魔法もかけておいたがそれにも反応が全然ない。今まで色々な場所を冒険してきたがこんなことはなかった。俺はいぶかしみながら奥に進んでいった。そうして一番奥にいたのは。
「来たわね」
「えっ!?」
所謂魔王の間だった。そこはやたら広く左右も天井も随分広かった。後ろに何か紋章が書かれていてその前に玉座がある。何段かの階段の上にあるその玉座は金で造られていてやけにみらびやかだ。もっともそこに座っている魔王はそうじゃなかったが。
俺は今驚いた声をあげたがその理由はこの魔王にあった。何と緑色のショートヘアに赤いくりっとした大きな目に白い死人みたいな肌。頭の左右には羊の角があって背中には黒い蝙蝠の翼がある。その顔は幼いけれど丸みがあってやけに可愛い。姿形はまんま女の子だ。黒いくるぶしまで隠れる服はもうお約束だった。
「勇者よ、私を倒す為に来たのね」
「誰なんだあんた一体」
「私がこの城の魔王よ」
自分で言ってきた。やっぱりそうだった。
「名前はカーラ」
「カーラ!?」
「そうよ、魔王カーラ」
また名乗ってきた。
「それが私の名前よ、わかったわね」
「わかったけれどよ。しかし」
「しかし?何よ」
ああ、カーラちゃんっていうのか。何でちゃん付けになっているかって?すぐにわかるさ。
「それはまた」
「私を倒して財宝を奪いに来たのね」
カーラちゃんは俺にそう問うてきた。玉座に座ってその赤い可愛い目で俺をキッと見据えてきて。またこりゃ随分と可愛いことで。
「そうなのね?答えなさい」
「最初はそうだったさ」
俺はこうカーラちゃんに答えた。
「最初は?」
「そうさ。けれど今は」
カーラちゃんを見詰めたまままた言う。
「違うな」
「どういうことなの、それは」
「なあ」
「!?」
素早さには自信がある。だから今までやってこれた。カーラちゃんが驚いたその隙に俺は駆け寄った。しかし随分とろい魔王様だと思った。いっぱしの冒険者に間合いを詰められるなんて。
俺はすぐに玉座のところに行ってカーラちゃんを抱き締めた。迷うことはなかった。
「気が変わったんだ
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