第三幕その七
[8]前話 [2]次話
「いや、それがまた美味しくて」
「どちらのお茶でしょうか」
「京都の宇治です」
「おお、宇治の」
「噂には聞いていましたが」
宇治のお茶のことをです、先生はそれを日本に来てから聞いたのです。
「美味しいです」
「あそこのお茶はまた別格です」
「日本のお茶の中でも」
「下りものとさえ言われる位で」
「上方からのですね」
「そうなのです、その宇治のお抹茶を贈られるとは」
このことからです、教授さんは先生を見てからこうしたことを言いました。
「そうですか、どうやら日笠さんは」
「あの方が何か」
「いえ、まあ先生も独身ですし」
「だからですか」
「お考えになってはどうでしょうか」
「何か最近よく言われますが」
「合うと思いますよ」
教授さんは微笑んでまた言いました。
「先生と日笠さんは」
「ですが僕は」
「ご結婚のことは考えておられますね」
「一応は」
「では」
「それでは」
「いえ、それが」
先生ははにかんでなのでした、こう教授さんに返しました。
「僕はどうにも」
「女性については」
「これまで交際したことがありません」
「そうなのですか」
「苦手でして」
女性との交際はというのです。
「別に同性愛でもないですが」
「それでもですか」
「女性との交際は」
「ううむ、先生は恋愛学は」
学問のことならかなりの先生もです、そちらの学問はといいますと。
「どうやらまだまだ」
「論文を書いていません」
「いえ、書かれて下さい」
笑ってこう返す教授さんでした。
「是非」
「恋愛学の論文を」
「そして学問は論文も大事ですが」
「実学ですね」
「そうです、それも重要なので」
だからこそというのです。
「そちらの学問にも励まれることを願います」
「難しいですね、スポーツ以上に」
「スポーツ以上にですか」
「僕は馬は乗られますがスポーツは苦手です」
その全般がです、先生は身体を動かすことはとかく苦手です。お散歩と乗馬はしますがそれでもなのです。
「どうしても」
「そして恋愛はですか」
「そのスポーツ以上にです」
苦手とだというのです。
「ですから」
「いやいや、苦手でもです」
それでもだというのです。
「是非共です」
「そちらも学んで」
「ご結婚されて下さい」
「ううん、難しいですね」
「難しくともです」
それでもというのです。
「しません」
「そうなのですね」
「はい、ですから」
絶対にと言ってです、そのうえで。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ