第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十 〜徐州での一夜〜
[5/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いえ。何を訊ねても無言を貫いています」
「そうか。殿、如何なさいます?」
「……皆、外してくれぬか。彩は残れ」
男の面構えからして、ただ者とは思えぬ。
口を割らせるよりも、自主的に話させる方が手っ取り早そうだ。
「殿のご命令だ。皆、外に出よ」
「はっ!」
兵全員が、足早に天幕を出て行った。
「さて。まずは、名を聞かせて貰おうか」
「…………」
「黙りか。では、私から名乗ろう。土方歳三だ」
と、男が微かに反応する。
「……貴殿が、土方殿。確かですな?」
「偽りを申すつもりはない。此処は我が陣、それと知っての事だな?」
男は、小さく頷く。
「……貴殿のその面構え、常人ではあるまい? それ故、拷問にかけずに話を聞こうと思ったのだが」
「……ならば、この縄を解いて頂きたい。それから、お人払いを」
「縄を解く前に、まずは名乗りを上げるべきではないのか? それからこの者は我が腹心の張コウ、何を聞かれても構わぬ」
「……わかりました。私は陳登と申します」
ほう、徐州の陳登と申せば……唯一人であろう。
「……私を御存知か?」
「些か、な。貴殿の父御は陳珪殿で相違ないか?」
「はい。ですが、貴殿、いえ貴方様とは初対面の筈。何故、私達の事を?」
「……悪いが、その問いには答えられぬな。彩、縄を解いてやれ」
「御意」
縄を解かれた陳登は、手を擦りながら立ち上がる。
「ふう。正体を明かした以上、私は役目を果たさなければなりますまい」
「うむ、聞こう」
「はい。実は、我が主に密かにお会いいただきたいのです」
「刺史の陶謙殿だな?」
「はっ」
「病に臥せっておられると聞いているが」
「然様です。それ故、土方殿と一度、話をさせて頂きたいと」
「ふむ……。だが、私は曹操殿の加勢としてこの地に来ている。面会ならば、曹操殿に申し入れてはどうか?」
陳登は、大きく頭を振った。
「いえ。我が主は、土方殿のみお連れせよ、と。これは、厳命にございます」
危険を承知で忍んできた理由としては、得心がいく。
……華琳には知られたくない、か。
「私のみ、という訳か。理由は?」
「……申し訳ありませんが、聞かされておりません」
問い質すだけ、無駄であろうな。
仮に知っていたとしても、決して話すまい。
……だが、迂闊に動く訳にもいかぬ。
華琳に知られずに陣を抜け出すのがまず困難。
それに、これが何らかの罠である可能性もある。
第一、此所から徐州城までの距離を考えるだけでも、密かに往来するなど不可能の極み。
「陳登殿。貴殿の口上は承った」
「で、では」
身を乗り出す陳登を、手で制した。
「待て。だが、今すぐ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ