第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十 〜徐州での一夜〜
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やら……」
「もう! いい加減にしてよ、飲み過ぎよ、お父様」
「ワシは酔ってなどおらん。いいから本当のところを……」
「い・い・か・ら、もう寝なさい!」
「いででででで! こ、これ、耳を引っ張るでない!」
そのまま、二人は出て行ってしまう。
そして、部屋にただ一人残されてしまった。
「殿。宜しいでしょうか?」
そこに、彩(張コウ)が顔を見せた。
「うむ。何事か?」
「は。実は先程、不審な者を捕らえまして。殿にもお知らせを、と」
「相わかった。では、参ろう」
「宜しいのですか?」
彩は、部屋を見渡す。
確かに料理は些か残されていて、宴の途中である事は明らかだ。
「構わぬであろう。火急の用である事は嘘ではない」
「……は。ところで、殿。この料理は曹操殿が?」
「うむ。どうかしたのか?」
「些か、気になるものですから。……一口、味見してみても宜しいでしょうか?」
「余っているのだ、構わぬ。……む、箸がないな。彩、私のを使え」
「え? あ、いや、はい。ありがとうございます」
慌てて、彩は箸を受け取る。
「如何致した?……そうか、洗わずに渡すとは不心得であったな」
拭き取る物を、と思ったが……見当たらぬな。、
「い、いいえ! このままでけ、結構ですとも!」
引ったくるように、箸を取った。
そして、炒め物に揚げ物、焼き物などを少しずつ取り、味を確かめていく。
……妙に、顔が赤い気がするのだが、言わぬが花だな。
「むむ、これは……」
首を傾げたり。
「うむ。……よし、勝ったな」
拳を握り締めたり。
……彩なりに、拘りや譲れぬものもあるようだな。
兵が寝泊まりするだけの宿が用意出来る筈もなく、殆どの者は城外の陣に留まっていた。
無論、羽目を外し過ぎない程度に、休息は取らせていたが。
「ご苦労」
「あ、これは張コウ様。土方様もご一緒で」
ふむ、休息中と言えども、兵らに弛緩した空気はないな。
流石、彩直属の隊だけの事はある。
「それで、例の者は?」
「はっ。厳重に見張りをつけ、あの中に」
兵が、天幕を指さした。
「わかった。引き続き、周囲の警戒を怠るな」
「応!」
「殿。よもや、とは思いますが」
「わかっている。油断するつもりはない」
「……では、こちらへ」
彩と共にいて、万が一という事もあるまいが。
天幕の中には、縛られた男が胡座をかいて座っていた。
その周囲を、数名の兵が固めている。
「…………」
男は無言で、私と彩に目を向けた。
髭に覆われた面体だが、眼光はなかなかの鋭さがある。
「何か話したか?」
「
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