第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十 〜徐州での一夜〜
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がない。
「歳三。好き嫌いはない?」
「特にないが」
「そう。なら、これでいいわね」
ふむ、見た目もそうだが、漂う香りもなかなかのようだ。
「では、いただくぞ」
「ええ、どうぞ」
箸を取り、青菜と肉の炒め物を口に運んだ。
……ほう、これは絶妙な塩加減だ。
油で素材の旨味を殺す事もない、見事な一品。
「……美味いな」
「当然ね。それ、私が作ったものよ」
華琳が?
……そう言えば、稟が華琳の料理の腕について、話していた事があったな。
「華琳。これら全てを、お前が?」
「そうよ。秋蘭もそれなりに心得はあるけど、今日は手伝わせなかったわ」
「……なるほど。大したものだ」
料理と言えども手を抜かぬあたり、華琳らしいとも言えるな。
半刻程して、県令が中座した。
「私は公務がありますが、皆様はどうぞごゆるりと」
気を利かせたのか、使用人も頭を下げ、出て行く。
「何なら、ワシも外すが?」
「お父様までいなくなる必要はないでしょう?」
華琳の言葉に、曹嵩は頭を振る。
「いや、お邪魔かと思ったのだが。随分と土方殿にご執心ではないか」
「それはそうよ。歳三にはいずれ、私の片腕になって貰うつもりだもの」
「ふふ、それだけかな?」
曹嵩は悪戯っぽい笑みを浮かべる。
「それだけ……って、どういう意味よ?」
「決まっておるではないか。土方殿、それにしてもえらく我が娘に気に入られているようですな」
「……恐れながら。華琳殿は拙者を買い被っておられます。拙者にはそこまでの才覚はござらん」
「ほ、御謙遜なさるか。だが、この時代に稀有な御仁である事は間違いないようだ。……華琳の婿殿など見つからぬと諦めておったが、貴殿ならば申し分なさそうじゃ」
「…………」
これはまた、随分と唐突な御仁だな。
「文武に優れ、この通り料理の腕前も申し分ないのだが、才気に溢れ過ぎているのが、親としては却って気がかりでしてな。その点、貴殿もまた優れた御仁の上、華琳が気に入っているのならなお結構ではないかと」
「な……」
華琳が、顔を一気に赤らめた。
「わ、私はそんなつもりで言ったんじゃないわ!」
「おや? では土方殿を男としては好みではない、と?」
「そ、そうじゃないけど……」
そう言いながら、華琳はチラチラと横目で私を見る。
……意外、と言うべきか。
麾下の将を愛でる性癖の持ち主だが、男に対しては奥手とは。
だが、それを知ったところで、華琳には何の弱味にもなり得ぬであろうが。
「わ、私は、歳三の、将としての才を買っているの! へ、変な勘繰りしないでよね!」
「そうか、残念じゃの。孫の顔を見られる日はいつになる
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