第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十 〜徐州での一夜〜
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
の。今は、赴任の途中でね」
「そうだったの。……でも、土方様。私などご一緒させていただいても宜しいのですか?」
「構わん。揚州までの道中、一人では心細かろう?」
「…………」
何やら思案する諸葛瑾。
「それに……曹操さん、絶対郁里さんに目をつけると思いますよ」
「え? 私に?」
「そうです。賊軍相手とは言え、この県城を守り通したのは郁里さんの才覚です。曹操さんの噂……ご存じでしょう?」
確かに、諸葛瑾ならば華琳の眼鏡に適うな。
才能としてもそうだが、容姿も朱里に似て、愛らしい。
まさしく、華琳の望む人材像と言える。
「本当は、私と一緒に来て欲しいけど……。でも、せめてご主人様のご厚意だけでも受けて貰えないかな?」
「……では、お世話になります。揚州まで、宜しくお願い致します」
事情はわからぬが、睡蓮と何か約定があるようだ。
……華琳には悪いが、本人の意思を尊重させて貰う事としよう。
その夜。
「さ、どうぞどうぞ」
「……失礼する」
私は、県令の自宅へと招かれた。
救援に対する礼、という事であったが……。
「おお、お見えになったようだな。ささ、入られよ」
「待っていたわ。席はそこよ」
上座にいたのは、曹嵩と華琳。
命令系統が違うとは申せ、華琳は州牧であり、曹嵩はその父親。
この場にいれば、県令よりも上席になっても不思議ではない。
……だが、ただの礼の為に催された場ではなさそうだな。
卓上には、手の込んだ料理が並べられている。
「では、乾杯と参りましょうかな。皆様、杯をお取り下さい。乾杯!」
「乾杯!」
県令の音頭で、宴が始まった。
「ご挨拶が遅れましたな。ワシは曹嵩と申します」
「ご丁寧に痛み入ります。拙者は土方と申します」
「まま、堅苦しい挨拶はこのぐらいにして。まずは一献」
「……は」
曹嵩は、機嫌良く勧めてきた。
「お父様。歳三はあまり強くないの、無理に勧めないで」
「ほ、そうか。土方殿、いつも我が娘が世話をかけておるようで」
「いえ。華琳殿には、寧ろ目をかけていただいている方が多うござる」
執拗な華琳への皮肉を込めたのだが、当人は平然としている。
意図には気付いたようで、眼がそう物語っているが。
「さ、料理も冷めないうちにどうぞ。私が取り分けてあげるわ」
「おお、曹操様自らなさらずとも」
慌てて、県令が使用人に合図するが、華琳はそれを手で制して、
「この程度の事、自分でするから平気よ。気を遣ってくれて申し訳ないけど」
「は、はぁ……」
その間にも、手際よく料理を取り分けていく華琳。
盛りつけ一つにも、美意識が働いているのか、全く粗雑さ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ