第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十 〜徐州での一夜〜
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県令以下、県城の者総出での出迎えを受けた。
華琳は曹嵩以下、一家の無事を互いに喜び合っているようだ。
「来てくれたんだね、朱里ちゃん」
「うん、ご主人様が放ってはおけないって言って下さったから。お姉ちゃん、無事で本当に良かった」
此方でも手を取り合い、喜ぶ諸葛姉妹。
「良かったな、朱里」
「はい!……あ、お姉ちゃん。自己紹介しなきゃ」
慌てて、諸葛瑾は居住まいを正す。
「は、初めまして。朱里がいつもお世話になっています。私は諸葛瑾、字を子瑜と申します」
「土方だ。無事で何よりであったな」
「はい。お陰様で命拾いをしました。本当にありがとうございました」
深々と頭を下げる諸葛瑾。
確かに朱里と似てはいるが、もう少し大人びた印象を受ける。
身の丈や体格は、稟と同じぐらいであろうか。
……性格はやはり姉妹、良く似ているようだ。
「よくぞ無事であったな」
「はい。県令さんにお願いして、甲冑を着せた藁人形と、曹操さんの旗をたくさん作っていただいたんです。あ、勿論曹嵩さんにはお許しを戴きましたけど」
「ほう。偽兵の計、という訳だな」
「そうです。それに、私が時々夜襲をかけていましたから。賊もあまり手を出して来ませんでした」
なるほど、単なる文官ではないという訳か。
……やはり、私の知識では、先入観と紙一重になる事があるな。
「そうか。だが、徐州は今後も治安に不安を残すであろう。このまま、此所に残るつもりか?」
「いえ。実は揚州に行くつもりだったんです」
「揚州? では、睡蓮(孫堅)に仕官するつもりか?」
私の言葉に、諸葛瑾は目を見開いた。
「ど、どうして孫堅様の真名を?」
「……経緯があって、預かっているのだ。無断で呼んでいる訳ではない」
「郁里(諸葛瑾)お姉ちゃん、ご主人様は凄い御方だよ? 曹操さんや袁紹さんみたいな方々からも真名を預けられているぐらいだから」
まるで我が事のように胸を張る朱里。
「ふふ、そうなんだろうね。朱里ちゃんだけじゃなく、愛里(徐庶)ちゃんまでお仕えしてるぐらいだからね」
名指しされた愛里は、しっかりと頷いた。
「私は、歳三さんに助けていただいたご恩もありますけどね。でも、お仕えする方としては、本当に理想の御方です」
「うんうん、愛里ちゃん、なかなか理想の仕官先が見つからないって嘆いていたもんね」
ほう、その話は初耳だな。
……ただ、愛里を助けた時の状況からして、あまり詮索せぬ方が良いのやも知れぬ。
当人から話そうとせぬ限りは、な。
「諸葛瑾。揚州に参るのなら、我らと同道せぬか?」
「え?」
「郁里お姉ちゃん、私達、交州へ向かう途中なんだよ。ご主人様、交州牧を仰せつかった
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