つぐない
とある鍛冶師、盗み聞く
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投刃》などという言葉が出てきた時点で、ユノは少女の死因がPKによるものだという確信を持っていた。持ってしまっていた。
であれば、平静でいられないのも至極当然だろう。
ただでさえPKに関してのあれこれは、ユノにとって大変デリケートな問題となっているのだ。
フラッシュバックというには少し大袈裟だが、おおかた、少女を襲った連中と過去の自分を重ね合わせていたのだろう。
親しい人物を失った悲しみに、自分も同類なのかもしれないという自己嫌悪、更には復讐心といった様々な感情に苛まれ、感情が決壊してしまった───そう考えれば、かつてないどに錯乱したユノの様子や、先のシェイリの言葉にも納得がいく。
納得が、いってしまう。
「………。なんだってんだよ、畜生が……!」
自分の中に浮かんだ最悪のイメージを振り払うように、壁に拳を叩き付けた。
もし、全てが自分の想像通りなのだとしたら。
プレイヤー同士の争いを阻止するために自らPKの汚名を被ったユノが、間接的にとはいえPKによる被害を受けたということになる。
周囲から人殺しとして扱われてきたユノにとって、これ以上の皮肉はないだろう。
被害者と面識のないリリアですら、そんなことをするプレイヤーが実在したのだということを考えただけで、嫌悪感で気分がささくれ立ってしまうほどだ。
ましてや当事者ともなれば、その胸中は察するに余りある。
ユノが復讐を望んでしまうのを、誰に止めることができようか───
───まあ……あのガキのお陰で踏み止まってはいるみてぇだが、一人だったらどうなってたかわかったもんじゃねぇな……。
シェイリのフォローのお陰で、ユノが何もかもを捨てて報復に走るといった心配はないだろう。
復讐心と自己嫌悪の間で揺れ動いていたのは事実のようだが、そんなユノの相方である少女は不思議と、そういった相手の感情を宥める術を知っているように思えた。
予想外の事態に陥ると感情を制御できなくなるユノのパートナーとしては、これ以上の相手はいないのではないだろうか。
「……オマエも運がよかったっつーか、いい巡り合わせに恵まれたっつーか。まあ……よかったな」
室内のユノに言うともなしに呟いて、一人思う。
いい巡り合わせ───なのだろう、きっと。
もしも今のユノに、こうして感情を吐き出させてくれる相手がいなかったら。
自分の大切な者を傷付けられたユノは、間違いなく暴走していただろう。
絶望に身を落とし、憎しみでその身を焦がし───例えそれが《投刃》に立ち戻ることなのだとしても、何の躊躇いもなく相手を殺していたことだろう。
そんな風になってしまわなかったのは、やはりあの少女の存在があったからだろう、と彼は考えている。
ユノは少女を守ろうと気張っているようだが、こうして精神的に追
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