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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
六十九 〜臥龍、羽ばたく〜
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んだな。
 二人を文官として紹介した筈だが、素性を知った上で空惚けていたのやも知れぬな。
「愛里、朱里。思うところを述べよ」
「……わかりました。すぐに思いつくのは、夜襲でしょうか」
「若しくは、火計ですね。或いは、その併用とか」
「夜襲は悪くありませんが、今日は満月です。それに、ここのところ雨が続いたせいで、草木も湿っているようですね」
 荀攸は、畳み掛けるように言い放つ。
 まるで、試すかのように。
 ……いや、実際に試しているな、あれは。
「朱里ちゃん、どう?」
「……うん。たぶん、どっちも解決出来ると思うよ、愛里ちゃん」
 何やら、頷き合う二人。
「銀花が言った問題を解決する策がありそうね。二人に任せてみましょう、銀花、秋蘭」
「華琳様が、それでいいと仰せなら」
「はっ。では土方殿、我が軍は準備を整えておきますので」
 愛里も朱里も、何か確信があっての事であろう。
 とにかく、任せてみるとしよう。


 その夜。
 満月が、煌々と辺りを照らす。
 真っ昼間、とまでは行かずとも、かなり視界は良い。
「おい、本当に大丈夫なのか?」
「ええ。過去の統計からすれば、確実です」
「大丈夫ですよ、朱里ちゃんがそこまで言うのなら、私も太鼓判を押せますから」
「……しかしな。殿、本当に宜しいのですか?」
 半信半疑と言った風情の彩(張コウ)。
「華琳も特に異論なし、と申している以上、策を遂行するより他にあるまい。それに、朱里と愛里の智謀は、お前もわかっているであろう?」
「……は」
「将が懐疑的なままでは、兵が動揺するぞ?」
「言われるまでもありませぬが……」
「ならば、二人を信じる事だ。何かあれば、責任は私が取れば済む事だ」
「そこまで仰せならば。……では、手筈通りに」
 彩は、兵の方へと向かって行った。
「あの……ご主人様」
「何だ、朱里?」
「……やっぱり、まだ私は信じていただけていないのでしょうか?」
 落ち込む朱里の肩を、愛里が叩く。
「仕方ないよ。稟さんや風さんみたいに、実績を見せた訳じゃないもの。でも、私も信じてるよ、朱里ちゃんの事」
「うん……」
「彩とて愚かではない。武官ではあるが、兵を人一倍大事にする性格だ。それ故、慎重にならざるを得ないのであろう」
「…………」
「案ずるな。この策が上手く行けば、彩だけではない。他の兵も、お前の事を信じるようになる」
「は、はい」
 漸く、朱里が顔を上げた。
「では、私も参る。愛里、朱里の事を頼むぞ」
「はいっ!」
 私とて、無闇に人を信じるつもりはない。
 だが、かの諸葛亮が、出任せで物を言うとも思えぬ、というのもある。
 ……それ以上に、歴史に大いに名を残した人物が、どのような働きを見せるのか。
 その事への
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