狂った宴の後に
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動く。それが欲からでなく本心からであれば余計に。
欲というモノは自分の為。初めから自分の命を計算に入れない彼は明にとって無欲に思えた。
結局のところ、自分は彼とは違う人種なのだと理解する。どちらもイカレているが、秋斗の方が人を外れていると。
「あったかかったもんねー……あん時」
大切な少女がこの世界から居なくなって、その後に起こった出来事。
彼女の命を喰らって自分を手に入れた明は、子供のように泣き叫んだ。
側に居てくれたのは彼で、他の者ならきっと壊れていた……そう思う。
何も言わずに抱きしめるだけで、彼は何も言わない。
慰めの言葉も、同情の言葉も、励ましの言葉も、何もかも必要なかった。
温もりが欲しかった。彼女が与えてくれたはずの温もりが。寂しくて辛かったから、誰かの暖かさに縋りたかった。
自分が殺した父が昔してくれたように包み込んで、忘れていた昔の自分をより一層思い出させてくれた。
泣き止んでから、袁家に復讐すると言った時も諭したりせず、真っ直ぐに黒瞳の視線を送って頷き、こんな言葉を明に送った。
『復讐は蜜より甘い。やったらやり返されるのは俺もお前さんも同じだが……その時が来るまで、死ぬまで生きろ。俺は世界を変えるまで殺されてやらんがな』
報いを受けるか否かは状況次第。願う人と抗う人が居れば、明も秋斗も誰かに殺される。
全ての人々に慕われる存在など居ない。人に理不尽を敷くとはそういう事で、そうではない甘い世界なら、明も夕も、誰しも等しく救われているはずなのだから。
にへら、と明は笑みを浮かべた。
自分勝手な押し付けでしか、やはり世界は変えられないのだと思えたから。それなら共に変えてやろう。精一杯生き抜いて抗って、殺される時はその時だ。
この世界に明にとっての本当の救いは無いが、それでも変わらず回っていく。せめて叶える想いの為に、彼女は彼と共に戦い生きる事を選んだ。
一陣の風が吹き抜けた。
寒かったが、彼女は微動だにしなかった。
ただ心の中に、また寂寥の風が吹き込んだ。
「夕……あたしさ……」
随分と疲れていた。このまま眠ってもいいかな、と思いながら声を出す。
「寂しいよ、やっぱり」
瞼を降ろせば、はらりと涙が一筋つたった。
「空しい、よ……あなたが居ないと」
復讐はもういない大切な少女の為に、ではない。自分の為で、それでいて彼女が望んだ世界の為ではあっても、彼女の為では無い。
「……っ」
与えてくれる温もりが欲しかった。
血だまりの中で声を震わせた。
殺した者達に強いてきた理不尽を、彼女は真っ直ぐに受け止める。
残ったのは空しさと寂寥。
彼女は此処にはいない。新しい温もりはあ
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