暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
狂った宴の後に
[5/10]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
抗った。次にそんな大地が出ない保障など何処にもない。
 万が一の事態で皆殺し命令が出た場合、それを為すのに躊躇ってはならない……それも理由の一つ。
 そして何より、黄巾の乱は民の反乱。力無き民を傷つけるその行いで、この乱世は始まった。あの戦を経験しているモノからすれば、兵士と戦うだけでは得られない感覚があると言えた。

「いい? あんたらは張コウ隊。汚い仕事だろうと、敵が家族だろうと友だろうと、どれだけ理不尽な命令であろうと、全てに従って貰う。それが出来ないなら死ね。抗っていいのは味方の刃で死ぬ覚悟のある奴だけ。ねぇ、愛しのバカ共?」

 首を傾けつつ、にへら、と緩い笑みを後ろに向ける。
 ハッとした彼らは、力強く頷いた。長い長い時間を紅揚羽と共に過ごし、自分達はヒトゴロシのロクデナシを仕事として、命を投げ捨てるのもソレの内だと染み込ませてきた為に。

「紅揚羽の元で戦う我らに退路は無し」
「己自身で選んだ選択肢から逃げるは兵士に非ず」

 二人が声を上げた。夕を守れなかった一人と、明の為に戦った一人。どちらも絶対遵守の命令に異を挟まない。

「そゆこと♪ お前らはヒトゴロシのロクデナシになるって決めたんでしょ? なら、此処でその線引きを越えちゃいな。戦って殺して死ぬのだけが戦じゃないんだよ。戦争に綺麗さを求めるな。生易しい論理だけで戦うな。命令を守れないならただの敵でしかない。
 良かったね♪ 此処が本物の戦場で敵が精兵だったらお前ら皆死んでるよ?」

 怯えるだけの新兵には分かり得ない感覚。
 戦場は安穏と暮らしているだけでは理解に至らぬモノ。どれだけの人が生きたいと望み、どれだけの人が野心を以っているのか。
 たかだか一兵卒であろうとも、戦功を上げれば金が上がる。生き残れば階級が上がり、百人長にでもなれば大きく違う。
 欲求は人間の持つ業であり、力でもある。誰だって死にたくないし、良い暮らしがしたいのだから。

 張コウ隊は現実的な思考に特化した部隊だ。
 綺麗事や感情論は練兵の邪魔になる。金の為に戦え、自分がしたい事の為に戦え……それが指標で、戦い方。
 それでいて効率を重視し、兵達が自分の好きなようにしている事が紅揚羽の為になるのだから纏まりは問題なく。

 彼の黒麒麟の身体とは逆接的でありながら相似な、まるで裏と表のような部隊であった。

「別にいんだよ? そうなりたくないってんならさ。綺麗に戦いたいって欲望も大事だかんね。でもあたしの隊には必要ないからぁ……そうだね、あたしと第一の三十を相手にして、全員殺せたら咎めとか無いし、褒賞としてたっくさんのお金も用意して貰えるよ。そのくらいで死ぬならあたしは覇王の認める五人には相応しくないし、試すには丁度いい」

 提案された事柄は異常過ぎた。
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2025 肥前のポチ