暁 〜小説投稿サイト〜
紅葉
3部分:第三章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
爪が伸びてきた。鍔競り合いになっていたがそれは次第に紅葉の優勢になっていた。そのうえでのこの爪であった。
「死ぬのじゃ。これでな」
 紅葉の笑みがさらに禍々しいものになった。伸びる五本の爪はそのまま維茂の腹に襲い掛かる。鬼女はここで勝利を確信していた。しかしであった。
 維茂もさる者だ。ここで紅葉が思いも寄らぬ行動に出たのであった。
「そうはいかんぞっ」
「何じゃとっ!?」 
 一旦後ろに跳んで間合いを離しそのうえで右にかわしたのである。それによりすんでのところで爪をかわした。衣を破られただけで済んだのだ。
「危ないところだったな」
「わらわの爪をかわしたか」
 紅葉は今の維茂を見て顔に浮かべていた笑みを完全に消した。
「どうやら。やるようじゃな」
「腕に覚えがなくてここに来たりはしない」
 維茂は再び刀を構えつつ紅葉に言葉を返した。
「決してな」
「ではわらわをどうしても倒すつもりか」
「名前は聞いた」
 これが維茂の返答であった。
「それならばな。最早逃げることはできぬ筈だ」
「如何にも。それではだ」
 その目がさらに赤く輝いた。禍々しさがさらに増す。
「死ぬがよいぞ。ここでな」8
「参るっ」
 音もなく摺り足で接近し今度は突きを入れる。
「これならばどうかっ」
 それは一度ではなかった。二度、三度と続けて突きを入れる。しかしそれは紅葉の身体をすり抜けるだけであった。ただ宙を突いているだけであった。
「むっ!?」
「見事な剣術なのは確かじゃ」
 刀をすり抜けさせている紅葉は悠然と笑っていた。
「じゃが。それだけではわらわは倒せぬぞ」
「妖術か!?」
「さてな」
 悠然と笑ってその言葉には答えない。
「何であろうな。しかしじゃ」
「むっ!?」 
「これは幻ではないぞ」
 今度は爪は伸ばさなかった。それで上から引き裂こうとした。維茂はそれを咄嗟に後ろに飛び退いてかわした。また危ういところで難を逃れることができた。
 しかし今度はそれで終わりではなかった。何と手の平から次々の火の玉を打ち出してきたのだ。それで維茂を焼こうというのだ。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ