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遊戯王GX〜鉄砲水の四方山話〜
ターン22 鉄砲水と手札の天使
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とした魔法、罠カードを実体化させたらどうだろうか、ともチラッと考えたが、割と自由にこっちの世界に出入りできるモンスターの精霊と違ってあの手のカードはいちいちデッキから引き出さないと実体化させることができない。チャクチャルさんが前に教えてくれたけど、この問題はカードに関する不思議な力を持つ超能力者、サイコデュエリストのカード実体化部門でもなかなか克服できない課題だったらしい。
 とにかく何か喋りつつここから抜け出すためのヒントを掴もうとして、視線をずらす。そもそもこの子は、さっきまで何もしてこなかったのになんでいきなり怒ったんだろう。解説という名の精霊通訳者、チャクチャルさんは相変わらず沈黙したままだ。どこかへ行っちゃったわけじゃないのは感じるけれど、何かアクションを起こすだけの力がないらしい。

『………』

 許可したにもかかわらずいつまでたっても何も言いださないことにしびれを切らしたのか、不機嫌そうに彼女が地面を蹴る。小石を蹴り飛ばしたらしい音に気を取られ、ふとそちらに目を動かしてみると、見えた。別にやらしい意味じゃない。なんとかこの場を生き延びるための手が見えたのだ。とはいえよくよく考えてみれば、彼女がデュエルモンスターズの精霊で、しかも人型である以上この方法が一番手っ取り早く平和的なのは明らかなはずだった。単にテンパって気づかなかっただけで。

「ね、ねぇ。僕と、デュエルしようよ」
『………』
「そのデュエルディスク、君のでしょ?デュエリストならこんな物騒なものしまって、カードで言いたいこと言えばいいんだしさ」
『……』

 ほんの少し、締め付ける腕の力が弱まったような気がした。ここはもうひと押しとみて、あえて黙ることにする。この場でペラペラしゃべることは、少なくとも彼女が相手の場合決してプラスにはならない。伝えたいことは伝えたのだから、後はそちらの判断に任せるということを態度で伝えるのだ。

『……!』

 これが結果的によかったのだろう。ふわり、と音もなく飛び上がった彼女は驚異的なジャンプ力で空中一回転をかましつつ数メートル離れた位置に着地した。そして腰につけていた驚くほど古いタイプの、いつかニュースで見たことあるヨーヨーの親玉かカップ焼きそばのデカいのみたいな回転式のデュエルディスク第一号ほどではないものの、そのすぐ後に開発されたモデルと思しきデュエルディスクを腕にはめる。

「自分で言い出したこととはいえ、なーんでこんなことになってるんだか。……なんだっていいよね、別に。それじゃあ、デュエルと洒落込もうか」

 結局、言ってみればいつもとやってることは何一つ変わらないのだ。ならそれでいいかと納得し、カードを引く。どれ、僕が後攻か。彼女の最初の動きをうかがうべく、フィールドに目をやる。少女の見た目からは想
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