第一部
第六章 〜交州牧篇〜
六十八 〜徐州へ〜
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らな」
去って行く愛里と入れ替わりで、朱里がやって来た。
「ご主人様。兵士さんの分も含めて、今日の宿の手配、終わりました」
「ご苦労。これからも当面、長丁場だ、お前ももう下がって休め」
「わかりました。ご主人様も、早めにお休み下さい」
「うむ」
さて、私も旅塵を払うとするか。
「彩。お前も休め」
「はい。あ、あの……」
何やら、言い淀む彩。
「今宵は、お傍にいたいのですが……」
「……そうだな。良かろう」
「はい!」
暫く、寂しい思いをさせてしまったやも知れぬな。
今宵は、その穴埋めに費やすとするか。
翌日。
行軍を再開した矢先。
「申し上げます!」
息を切らせて、斥候が飛び込んできた。
「何事か?」
「はっ! 徐州にて黄巾党の残党が蜂起したとの知らせが入りました」
「徐州ですか……」
朱里の顔が曇る。
「如何致した?」
「あ、済みません。……徐州には、私の姉がいるんです」
「姉か。……諸葛瑾か?」
「はわわ、ど、どうしてご存じなんですか?」
「申したであろう。私は、正史と呼ばれる、別の世界の歴史を多少は知っているとな」
「そ、そうでしたね。それで、刺史の陶謙さんは動いたのですか?」
朱里の問いに、斥候の兵は頭を振った。
「いえ。陶謙様はどうやら病を得ておられるご様子で、起き上がる事もままならないとか。今のところ、徐州の兵は守勢一方のようです」
厄介な事と相成った。
我らは兵こそ引き連れているが、ほぼ自衛の為の戦力しか持たぬ身。
更に、反乱が起きているのは縁もゆかりもない他の州、迂闊に干渉も出来ぬ。
「それで、賊軍の数は?」
「はっ。未だ定かではありませんが、周辺から続々と残党が合流しているらしく……規模は膨れ上がる一方とか」
「とにかく、実態を正確に把握する事だ。数と正確な場所、出来れば首魁の名も調べよ」
「はっ!」
再び飛び出していく斥候。
「殿。よもや、賊軍に向かうおつもりではないでしょうな?」
「無論だ。我らにはそのような余力も権限もない」
「……はい。無念ですが、やむを得ませぬ」
彩ならずとも、無法を働く者共を、みすみす見逃す事は本意ではない。
だが、今は関わり合いになって良い場面ではない。
「愛里。我らはともかくとして、この反乱、早急に討伐の為の軍が派遣されるとは思うが、どう見るか?」
「そうですね。隣接する、青州と豫州、揚州から兵を出す事になるのでしょうが……」
愛里は、言葉を濁す。
「どうかしたか?」
「……豫州は、孔チュウさんが刺史として赴任したばかりなんですが、黄巾党が大規模に活動した地でもあって、今はその建て直しに追われているみたいでして」
「ふむ。そもそも、刺史ではまともな兵力も期待出来ぬ、という
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