第一部
第六章 〜交州牧篇〜
六十七 〜別離〜
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「殿、お帰りなさいませ」
ギョウの手前で、彩(張コウ)の出迎えを受けた。
「留守居、大儀であった。変事はなかったか?」
「はい。愛里(徐庶)や元皓(田豊)らがしっかりと纏め上げていましたから」
彩も、率いる兵にもどこか、安堵した様子がある。
何気なく言ってはいるが、やはり気苦労をかけたようだな。
せめて、今宵は存分に労ってやらねばなるまい。
「麗羽、全軍を一度にギョウに入れるのは無理かと思うが。一部だけを連れ、他は城外に駐屯させよ」
「わかりましたわ。猪々子さん、すぐに手配りを」
「へーい」
「斗誌さんは、城内に連れて行く兵の選抜をお願いしますわ」
「わかりました、麗羽さま」
麗羽達が、指示を出すべく動き出した。、
「殿。……今、袁紹殿らを真名でお呼びしていたようですが?」
彩が、険しい目で私を見る。
「やましい事は何もない。事情は後で話すが、彩が思っているような事はないぞ?」
「……殿の事です、信じますが。ただ、私だけではなく、皆に経緯は説明をお願いしますぞ」
「わかっている。皆にも、話しておかねばならぬ話はある」
「…………」
恋と霞、二人がこの場にいる事も問いたいのであろう。
だが、此度はそれ以上に思うところがある。
……腹を据えてかかるより他にあるまい。
彩と愛里、それに朱里が用意した食事を済ませ、一息ついた。
……恋の小動物の如き食べ方に、皆が惚けたのはさておき。
「……以上だ。霞、ねね、何か補足はあるか?」
主立った者に、その場でギョウを出て以降のあらましを語った。
「いや、特にあらへんよ」
「ねねも、歳三殿が仰せになった通りで良いと思いますぞ」
私は頷き、皆の反応を見る。
まずは、彩が口火を切った。
「納得いきませんが、既に勅令として出された話。……受けるしかありませんな」
「ええ。太守様であったからこそ、この魏郡はここまで立ち直り、発展したのですが」
「しかも、後任はあの袁紹か……。まぁ、旦那の話じゃ、だいぶ改心したようだけどさ」
「……ただ、袁紹さんが民の皆さんから信頼を取り戻すには、相当な努力が必要でしょうね。皆さん、どうしても歳三さんと比較してしまうでしょうから」
「そうでしょうね。私も、愛里ちゃんを手伝ってみて、歳三さんが如何に慕われているか、本当に実感しました」
「せやから、余計にタマなし共に睨まれたっちゅうんはあるやろな。歳っちをこのままギョウに置いたら、終いに手を出せへんようになるかも知れへん。せやから、縁も所縁もない交州へ……陰湿なあいつららしいやり口やで」
「おまけに、月殿に名誉職を与え、代わりに将や兵を手放せですからな。卑劣極まりないのです!」
憤懣やるかたないのは、皆同じであろう。
……だが、今はただ、黙っ
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