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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
六十七 〜別離〜
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て従うより他に道はない。
 私の知る歴史とはいろいろと違ってきてはいるが、それでも漢王朝の終焉だけは確実に迫っている。
 各地に散った諸侯もそれは感じていよう。
 そうなれば、世は再び大乱となるであろう。
 ……この国が、何らかの形で統一されるまでは。
「霞、恋、ねね。わかっているであろうが」
「……ああ。今夜のうちに、西涼へ向かうわ」
「ふむ。ねね達は明朝ですな、恋殿」
「……ん。ちんきゅーに任せる」
 名残惜しいのは確かだが、この者らを此所に留め置く事は得策ではない。
 今のところ、十常侍らの間諜と思しき者は姿を見せぬが、油断は禁物。
「ねね。白蓮にこの書簡を渡すが良い」
「了解ですぞ」
 とりあえず、この三名への処置はこれで良いであろう。
「彩。全軍を連れては行けぬ以上、兵らは一度解雇するしかあるまい。それでも、交州行きを望む者は如何程と見る?」
「は。もともとの私の手勢、それに前太守から引き継ぐ格好になった兵は大多数が該当するかと。問題は、殿に降った、元黄巾党の者共でしょうな」
「……うむ」
「それとなく、主だった者に当たってみる事とします。結果は後程報告に」
「頼む。愛里と朱里は、民への布告と糧秣の準備、文書の取り纏めを」
「わかりました」
「はい!」
 そして、元皓と嵐(沮授)がその場に残る。
「旦那。おいら達は?」
「うむ。二人には話がある。一緒に参れ」
 二人は、顔を見合わせた。

 城内の一室に、二人を連れて行く。
「旦那。こんな場所まで何をしに?」
「入ればわかる」
 私は、戸を何度か叩いた。
 中から、斗誌が顔を覗かせた。
「あ、歳三さん、お待ちしていました」
「待たせたな」
 部屋の中には、麗羽が待ち構えていた。
 ……無論、玉座を占めるよう真似はしておらぬ。
 それどころか、立ったまま我らを迎えた。
「お待ちしておりましたわ、お師様。……そして、ご無沙汰していますわ、田豊さん、沮授さん」
 ただの挨拶にも、優雅さはあっても気取ったところはない。
「……え?」
「……だ、旦那? ホントにこの人、あの袁紹さん……か?」
 真名を預かった事、弟子入りを認めた事は既に話してはある。
 だが、それを差し引いても、麗羽の変わり様には驚きを禁じ得ぬようだな。
「皆さん、立ち話も何ですから、座りませんか?」
「そうだな。斗誌、椅子を並べてくれ」
「はい」
 五脚の椅子を、斗誌が円状に並べ始めた。
 その中心には、円卓を置く。
「あの、太守様。これは?」
「車座と言ってな。こうすれば、序列など気にせずに座れるであろう?」
 そう言えば、この時代には円卓という習慣もないようだな。
 麗羽と斗誌には予め言い含めておいたが、元皓と嵐は眼を丸くしている。

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