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耳なし芳一異伝
5部分:第五章
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てだ。全てがわかったのだった。
「私は憑かれてはいない」
 このことはよくわかった。
 そしてそのうえ。彼の語りを心から望んでいた。そのこともわかったのだ。
 だとすればだ。彼はすぐにそうした。そうするべきだと確信してだ。
 琵琶を鳴らしはじめた。すると彼等の様子が一変した。
「この琵琶の音は」
「芳一殿の音だ」
「そうだ、間違いない」
 すぐにこのことを悟ったのである。
「芳一殿がおられる」
「姿は見えないが」
「ここにおられるのか」
「この素晴らしい琵琶の音こそが」
 証であるというのだった。それを聞いて彼等はそれまでの残念さと戸惑いを消してだ。うっとりとして琵琶に聞き惚れるのだった。
「流石だ」
「素晴らしい」
「この音こそが」
 こうそれぞれ言ってその音を聞いてだ。静まり返って聞くのだった。

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