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耳なし芳一異伝
1部分:第一章
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わると彼が言ってきた。
「今日はよく語ってくれた」
「はい」
「ではまた明日だ」
 明日もだというのだ」
「報酬はそなたの寺に着いたらその前に置いておく」
「わかりました」
「では。寺まで送ろう」
 こうして語りを終えたのだった。そして次の日もまた次の日もそうやって語りを続ける。それは毎夜毎夜続き報酬はその都度かなりのものだった。それを見て寺の和尚は怪訝な顔になった。
「芳一の客のことだが」
「毎夜呼ぶその人のことですね」
「誰なのじゃ?」
 そのことを寺の小僧の一人に対して問うのだった。
「それは一体」
「さて」
 ところがであった。ここでの小僧の返答は要領を得ないものだった。首を傾げさえさせている。
「誰なのでしょうか」
「わからんというのか」
「芳一さんに聞いてもです」
「芳一も知らないというのか」
「ええ、そうなんですよ」
 そうしてまたしても要領を得ない返事を出すのだった。

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