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ブラック・ブレットー白き少女
一人の勇気と一人の願い
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んな所で死ぬつもりなんてないよ。ある程度時間を稼いだら直ぐに追いかける」

 嘘だ。

 アリスは斥候部隊の生き残りからこっそり話を聞いたのだが、ガストレアの群れの数は優に1000を越えるらしい。

 そんな所に行って、戻って来られる訳がない。

「さあ! 早く準備しろ! 死にてぇのか!」

 亡命キャンプの人々は浩一のそんな言葉に納得こそしていないものの、それ以上の案が出ないので従うしかなかったのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「浩一」

 皆の準備がもう少しで終わりそうになった頃、私は浩一の所に来ていた。

「なんだ、アリスか。どうかしたのか?」

 気丈に振る舞う浩一から目を背けたくなるが必死にこらえて会話を続ける。

「手」

「? 何言ってるんだ?」

「震えてるよ」

「っ!!!」

 浩一は戦闘の準備をしている間もずっと手が震えていたのだった。

「…………やっぱり、私も残「やめろ!」っ!!」

 いきなり大声で怒鳴った浩一に少し驚いた。

「お前の気持ちは嬉しい、だがお前は相当に強い。俺がいなくなった後に皆を守ってやって欲しい」

「でも…………でもっ!」

 別に安っぽい正義感とか、ちんけな恋愛感情に任せてこんな事を言ったのではない。

 ただ、私はこの男の事を気に入っていたのだった。

 『呪われた子供達』にも忌避などをせず、1人の人として見る事ができるこの男の事を。

「アリス、頼んだぞ」

 そう言うと浩一は誰にも何も言わずに1人で行ってしまったのだった。





ーーーーーーーーー浩一視点ーーーーーーーーー


「はあ、はあ」

 緊張で呼吸が乱れる、手が震える、膝が笑っている。

 本当は逃げ出したかった。

 何もかも見捨てて行きたかった。

 羞恥心もプライドも捨てて逃げ出したかった。

 だが、俺が逃げたら確実に皆死ぬ。

「浩一」

 アリスが話掛けてきた。

「なんだ、アリスか。どうかしたのか?」

 俺はあくまで冷静に返答する。

「手」

「? 何を言ってるんだ?」

「震えてるよ」

「っ!!!」

 …………やっぱり、アリスの目は誤魔化せないか。

 こいつはひとの感情に対して凄く敏感に反応するからな。

「…………やっぱり私も残「やめろ!」っ!!」

 駄目だ、それは絶対に駄目だ。

 …………こいつはいつも優し過ぎる。

 そしてその優しさはいつかこいつ自身を滅ぼす。

「お前の気持ちは嬉しい、だがお前は相当に強い。俺がいなくなった後に皆を守ってやって欲しい」

 …………
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