第一部
第六章 〜交州牧篇〜
六十六 〜冀州にて〜
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ない霞に、苦笑するしかない私だった。
軍は、粛々と東へと向かう。
特に行く手を妨げる者もないが、念の為、斥候は放ってある。
「麗羽。戦いとは情報の如何で決まる。常日頃より収集を怠るでないぞ」
「はい、お師様。このような平時でも、お師様はそれを欠かさないのですね」
「……麗羽。平時とは、そもそもがこのようにものものしい真似をせずともすむ時世の事。仮初めの姿を真に受けると、いずれお前の命取りになりかねぬ。心しておけ」
「……わかりましたわ」
そう答える麗羽を見ながら、私は思う。
麗羽自身は変わった、そして変わろうとしている。
……だが、経験は積み重ねでしか得られぬもの、一朝一夕とはいかぬ。
それを補うのが麾下の役目だが、主立った者と言えば斗誌と猪々子のみ。
しかも、猪々子は武一辺倒、斗誌が多少は政務を見られるが、それとて止むに止まれぬだけの事だ。
私は幸い、そういった人材も得られたが、麗羽の場合はそれが皆無。
……荀ケでは才があっても道を誤りかねぬ故、追いやった事は間違いとは思わぬが。
む、いかんいかん。
麗羽に師事は許したが、自ら学ぶように仕向けなければ意味がないではないか。
やはり、師などと柄でもないのであろうな、私には。
「土方様」
斥候の声で、物思いの世界から引き戻された。
「何か?」
「はっ。この先の村から使者が参りまして。土方様に是非、お立ち寄りをと」
「我らはギョウへと向かう、謂わば公用中の身。それを承知での事か?」
「そのようです。如何致しましょう?」
何らかの直訴であろうか。
だが、困り事や訴訟の類は、まず県令に申し出るように伝えている。
それでも拉致があかぬ場合は、ギョウにて担当官を経て、愛里(徐庶)らが受けている筈。
……よもや、愛里や元皓(田豊)らがそれを怠っているとは思わぬが。
「麗羽。斗誌を借りたいのだが、良いか?」
「ええ」
「済まぬ。斗誌、この者と同行し、用件を確かめてきて欲しいのだ」
「私が、ですか?」
「そうだ。私は既に魏郡太守ではない、濫りに冀州の民と接触するのは拙かろう」
「お師様。それならば、わたくしが許可すれば宜しいのでは?」
「……いや、申し出ている者の素性が定かでない以上、それを確かめねばなるまい。斗誌が適任と思うが」
「……わかりました。麗羽様、歳三さん、お任せ下さい」
斗誌は頷き、駆けていく。
半刻後。
私は麗羽、斗誌、恋、若干の兵と共に、その村を訪れていた。
どうしても私と直接話したいとの事、既に任を解かれた私にそこまでする義務はない……そう突っぱねる事も出来よう。
だが、その事で麗羽が不利益を被る可能性もあり得る。
仮に、何らかの企みを持っているのであれば、それを見抜かね
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