本編
第十九話 パッフェルベルのカノン
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西暦2115年 11月 19日
とある哨戒部隊司令官
私ことユースフスが率いる我が304哨戒部隊は、現在特に問題もなく順調に哨戒ルートを回っていた。
艦長席のデスクから一枚の写真を取り出した。
妻のエリアと今年で7歳になるメリー、1年前に家族で京都に行ったときに撮った写真だ。
あそこで食べた抹茶と団子がとてもおいしかった。あの時メリーは抹茶を飲んだ瞬間苦いといって吹き出してしまい、そのあとその店の女将にクスクス笑われたのはいい思い出だ。
この任務が終われば6か月ぶりに長期休暇がもらえる。
家族からはたびたび手紙が届く。そしてそのたびにメリーが弾いたピアノが録音されたテープが添えられてくる。何かあったときはそれを聞いて落ち着いていた。だが、生の演奏を聴いてみたい。そうだ、パッフェルベルのカノン、メリーが得意だった曲だ。メリーも前よりももっと上手になっているだろうし。
早くこんな任務終わらせて家に帰りたいものだ。
艦長席で紅茶を飲みながら写真を見ていると警報アラームが敵の襲来を告げた。
すぐに写真をデスクにしまって叫ぶ。
「敵か!?」
「ディベル粒子が周辺地域に散布されています!一部の電子機器に異常発生!」
「5時方向に敵艦隊反応!数、およそ・・・750隻!」
その言葉に艦橋にいたすべての者が一瞬固まった。それもそうだろう、こちらは巡洋艦1隻、駆逐艦5隻、軽空母1隻、哨戒部隊なのだから当たり前だが、勝てるはずがない。
私はすぐさま離脱命令を出した。
艦隊の規模が大きければ大きいほど移動に時間がかかる。なので十分逃げ切れると思ったが・・・
どうやら運が悪かったらしい。
「後方から急速で接近してくる艦艇!数およそ15隻!
ま・・・まさか・・・
高速戦艦です!」
【高速戦艦】
可能な限り装甲を削り、代わりにより強力な火力と速力を得た、高速艦艇である。
ガルメチアス帝国が敵に一撃離脱を行うために開発した新鋭艦であるが、1隻のコストが戦艦3隻分というぼったくり価格になっているためすべての戦艦がこれに入れ替わることはなく、一部の部隊に少数配備されるにとどまっている。
高速戦艦からは巡洋艦と軽空母はまず逃げ切れない。駆逐艦も第2世代以上のものでしか逃げ切れない。
その第2世代はこの艦隊に1隻しかいない。
駆逐艦ユキカゼだ。
このままでは我が艦隊の全滅は避けられない。しかし、たとえ全滅したとしても情報だけでも届けなければならない。
私はユキカゼに最大速度で離脱するように伝えると軽空母から艦載機を発進させ、全艦に反転を命じた。
部下たちも覚悟を決めたらしくほぼ死ぬかもしれないというのに”高速戦艦だからなんだっていうんだ、沈めてやるぜ!”等々笑いながら言っている。
敵
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