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メフィストの杖〜願叶師・鈴野夜雄弥
第二話
Y
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で扉の前まで来たは良いが、その扉を開くことは出来なかった。

- この向こうに…何かがいる…。 -

 その“何か"は強烈にその身を誇示していて、直ぐにその存在に気が付いた。
 声は確かに部屋の中から聞こえた。しかし、気配は扉の向こう側…。
「何だ!何なんだよ!」
 久保は扉から退いて叫んだ。すると…再び声が響いた。
「何だ…だと?」
 そう聞こえるや、その扉が静かに開いた。
「…ッ!?」
 完全に扉が開くと、そこには古き英国紳士を彷彿とさせる男が立っていた。
「やぁ、久しぶりだね。」
「お前…誰だ!誰なんだよ!」
「私のことを忘れたのかい?」
 そう言って紳士がシルクハットを取って顔を見せると、久保は目を見開いた。
「まさか…!」
 その顔に久保は見覚えがあった。しかし、髪や目、肌の色が違ったため直ぐには分からなかったのだ。
「一体…お前、何者なんだ…。」
「何者…か。君にとっては死神かもね。」
 そう微笑を浮かべながら言うと、鈴野夜…いや、ロレは彼の前へ行くべく部屋の中へと足を進めた。
「来るな!」
 久保は冷や汗を流しながら後退するが、少し下がったところで不意に何かにぶつかって進めなくなった。そのため振り返ってみるや、そこにも何者かが立ちはだかっていた。
「…!」
 彼は蒼白い焔の中、もう声も出せずに口をパクパクとしている。
「俺のことも憶えてるかな?」
 そこにいたのはメフィストだった。無論、久保はメフィストにも見覚えがあるが、何故ここに居るのか理解出来ずにいた。
「さて…話してもらわないと。君、司をどうしたんだい?」
「…ッ!」
 彼の顔は恐怖に強張り、そして司と最期に会った時を思い出していた。
 久保は司に麻薬の売人をさせていた。最初、司はそれを拒んだが、拒めば妹がどうなるか…そう言って脅して遣らせていたのだ。
 なぜ司だったのか?理由は簡単…その容姿と頭脳だった。
 司の容姿は中庸で、パッとしない。悪くはないのだが、一目で記憶されるほど際立ってはいないのだ。そして頭脳は…某有名大学へ進学出来るほどで、久保はそこに目を付けたのだ。それ故、久保は今まで捕まらずにやってこれた。
 ところが、そんな司が警察にたれ込みに行く素振りを見せたため、久保は自ら彼の胸にナイフを突き立てた。手下達にもそれを見せ、裏切りの代償はこうなると笑ったのだ。
 司は…見せしめに殺されたのだ。
 彼の遺体は人里離れた山中に棄てられた。勿論、人に見付からぬよう谷底へと投げ落としたのだ。
「あ…あいつが…あいつが悪いんだ!」
 久保は急に声を荒げて叫んだ。そこには“あいつ"を責める言葉ばかりが連なり、自分を擁護するに終始していた。
 だが、久保はそこで全て喋っていることに気付いてなかった。この自分よがりな
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