第二話
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んじゃないかね。何か用があって来てるんかい?」
「いや、たまたま通りがかったので、どうしてるかと思って顔を出したんですよ。」
大崎が苦笑しつつそう返した時、後ろで働いていた女性陣も手を休めて二人を見た。
「あらま・・・ホントだ。」
「そう言えばそうだねぇ。私も分からんかったわ。髪も伸びてるしねぇ。」
そうして皆が席を立って二人のところへ集まったため、そこで休憩と言うことになった。
最初に二人へと近寄った男性が瀬田孝だ。
約十年前、大崎は毎日の様にこの町に来ていた。この小さな工場で、彼女・・・瀬田直美が働いていたからだ。
彼女と大崎が出会ったのは中学の時だった。大崎は二年、直美は三年だった。
最初は部活で気の会う仲間みたいなものだったが、高校も一緒となり、大崎が二年の時から付き合い始めた。まるでそれが当たり前だと言うように。
一つ年上の直美は勉強も出来て顔立ちも良く、付き合い出した時には随分と羨ましがられた。
直美は大学進学を薦められていたが、早く自立したいと高校卒業後、直ぐにこの工場で働き始めた。
当時は工場にも多くの仕事があり、従業員も五十人はいた。無論、賃金も高かったのだ。
一年遅れて大崎も卒業し、彼はデパートの店員として働きながら自動車の免許を取得した。
二人は一緒に暮らすことを考えていたが、そう容易いことではなかった。そのため、大崎は少しでも直美との時間を持つため、彼女の送り迎えをしていた。そこに時折、鈴野夜とメフィストも顔を出しては他愛もないお喋りをしながらドライブを楽しんだりもしていたのだった。
この時点で鈴野夜は既に釘宮のところへ間借りしていたが、以前はこの町に住んでいた。大崎が仮免許を取得出来た時、隣に座って指導したのは鈴野夜なのだ。
鈴野夜の指導は厳しく、標識を厳格に守らせたお陰で今の大崎がある。最初はかなり荒っぽい運転だったのだ・・・。
さて、話を戻すことにしよう。
「二人とも、今日はこっちに泊まるのかい?」
孝はそう問った。要は、もう少し長く居られるのかと聞きたいのだ。
「はい。二、三日はこっちにいるつもりです。」
「泊まる宿は決めて来たのかい?」
「いや、これから探そうかと。」
「それじゃうちに泊まれば良い。部屋もあるし、布団はこの間干したばかりだからな。」
孝がそう言うと、女性陣の一人が口を開いた。それはこの中でも最長老のシズと言うお婆さんだった。
「そんじゃ、今晩は私が飯作りに行くかねぇ。何か食べたもんはあるかい?」
孫でも見ているみたいにニコニコしながら聞くシズ婆さんに、鈴野夜と大崎は些かたじろいだ。
丁度その時、誰かのケータイの着信音が響いた。
「おっと・・・電話だ。」
それは孝のケータイだった。彼はそれをポケットから取り出すと、着
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