第一部
第五章 〜再上洛〜
六十五 〜再会、そして出立〜
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」
「……本当に済まぬ。改めて名乗る、私が土方だ」
「承りましたわ。璃々、あなたも自己紹介なさい」
ついてきた黄忠の娘が、元気よく頷く。
「初めまして。わたしは璃々って言うの、よろしくね!」
「はっはっは、元気が良い童じゃの。どれ、向こうで儂と遊ばぬか?」
と、祭。
「お母さん、いいかな?」
「ええ。では黄蓋様、申し訳ありませんが」
「気になさらずとも良い。何故か、儂は童に好かれるようでな。明命も参れ」
「え? 私もですか?」
「なんじゃ。儂一人に押しつけるつもりか?」
「い、いえ! では、失礼します!」
そう言って、三人は庭の方へと出て行った。
気を遣わせてしまったようだな。
「済まんな、睡蓮」
「気にするな。何なら、俺も外すが?」
「いや、隠す程の事もない。私は黄河より南の地をまだ見た事がなくてな。それで、洛陽行きの最中、密かに見聞するつもりであったのだ」
睡蓮にも、本当の目的を話す訳にはいかぬ。
嘘を重ねるのは不本意だが、やむを得まい。
「確かに、曹操もそんな話をしていたな。つくづく、大胆な奴だ。そう思わねぇか、黄忠?」
「ええ、そうですわね。そう言えば、お供の二人もただ者ではなかったようですが」
「……それも詫びねばなるまい。あれは徐晃と郭嘉、どちらも私の仲間だ」
「仲間、ですか?」
当惑したような黄忠に、睡蓮が肩を竦めながら、
「歳三が変わっているのはそこなのさ。仕えてるんだから主従の関係になる筈なのに、主立った連中を皆、仲間と扱ってるんだぜ?」
「何故でしょうか? 孫堅様だけでなく、他の諸侯も皆さん、普通は主従とみなしますわ」
「……普通、か。私が普通ではないから、それが理由だ」
「普通ではない、ですか」
「そうだ。私は未だ嘗て、組織の頂点に立った事はない。それに相応しいとも思っておらぬ。そのような者が、いきなり主人面するのはおかしかろう?」
「……ですが、土方様の元に集う人材は、一騎当千の猛者か、智に優れた人ばかり、そう聞いています。そのような方々が、主と認められない方に従おうなどと思うでしょうか?」
納得がいかぬ、か。
「なぁ、歳三。一つ、提案があるんだが」
「何だ、睡蓮?」
「もっと、ざっくばらんに語った方がいいんじゃねぇか?」
「……どうせよと申すのだ?」
睡蓮は意味ありげに笑うと、
「お前んとこの酒、まだあるんだろ? あれ飲りながらだと、話も捗るぜ?」
「お酒ですか?」
「そうだ。最近、新しく出た美味い酒、知ってるか?」
「いえ。……それを、土方様が?」
「正確には違う。私は製法を教えたのみ、作っているのは蘇双という商人だ」
途端に、黄忠は目を輝かせた。
「黄忠、お前さんもかなり酒好きと見たが?」
「はい。孫堅様もお好きなのですね
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