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堕天使
5部分:第五章
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人の神への信仰を向けさせる為だと言われた」
「私は飢饉を起こす様に言われた」
「私は疫病だ」
 どの堕天使達もかつて神に命じられたことを話していく。しかしだった。
 誰もがだ。こう言うのだった。
「だがそれはだ」
「罪なき者達を苦しめることだ」
「それは間違っている」
「だから私は堕天使になった」
「そうだな。私もまただ」
 遠い目になりだ。マキエルは話す。
 既にその翼は黒くなっている。その翼こそがだった。 
 堕天使の証だ。その翼を背にして言うのである。
「戦乱を起こさず。この世界に来た」
「そうだな。誰もがな」
「神の命令に従わなかった」
「そうして我々は悪になりだ」
「今この世界にいる」
「だがそれでもだ」
 マキエルは言った。確かな声で。
「私は後悔なぞしていない」
「私もだ」
「私とて同じだ」
 仲間達もだ。確かな声で次々に話す。
「悪を犯した。しかし罪なき人間達を害することが悪ならだ」
「我々は喜んで悪になろう」
 これが堕天使達の結論だったのだ。そうしてだ。
 マキエルはだ。葡萄の美酒を飲みつつ仲間達に話したのだった。
「そうだな。私達は悪だが間違ったことはしていない」
「正義ではないが我々は我々の信じることを果たした」
「それだけだ」
「なら喜んで堕天使となろう」
 マキエルは言い切った。そしてだった。
 自分の傍にいて山羊の乳を飲んでいるサトエルにもだ。微笑んで言うのであった。
「では。これからはだ」
「はい、この地下の世界で」
「自分の信じるものの為に生きよう」
「人間を見てですね」
 彼等は彼等の目で人間を見て動くことにしたのである。そしてそのことに後悔を感じずにだ。胸を張って地下の世界にいるのだった。彼等の今の世界に。


堕天使   完


                          2011・11・28

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