第十五章 忘却の夢迷宮
第一話 定まらぬ未来
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いて。
わたしは、何も出来なかった幼い頃の自分ではなく、強力な魔法使いとなっており、傍には味方の軍がいる。
あれだけ憎かった父の仇が取れるかもしれないのだ。
それが、怖い。
怖かった―――恐ろしかった。
自分が自分ではなくなるかのような。
感情が、わたしを侵していく。
憎しみが、怒りが、悲しみが、恐怖が―――わたしを染め上げる。
だから、駄目なのだ。
何時も以上に、彼を欲している。
心が、身体が、彼を求めている。
ナノニ、カレノソバニハ、カノジョガイテ……。
彼に、傍に居て欲しい。
抱きしめて欲しい。
守って欲しい。
なのに、彼の隣には彼女が―――遠坂凛がいる。
もしかしたら、わたしはまた、一人になるかもしれない。
彼がいなくなれば……わたしはどうなるのだろう……。
―――ああ、もう、何もカンガエラレナイ―――カンガエタクナイ―――。
コノママナニモカンジズ、カンガエズ―――タダ、フクシュウ二―――
静かに、深く落ちていく意識の中、タバサの耳に扉を叩く音と―――
「―――タバサ」
―――声が届く。
「……」
深く、暗い―――意識の底へと落ちようとしたタバサの意識を拾い上げたのは、セイバーの声であった。
「……なに」
ベッドから起き上がることもなく、木目の天井を焦点の定まらない瞳で見上げながら、タバサは扉の向こうに立っているだろうセイバーに返事をする。
「……少し、あなたに話があります」
「そう」
感情を感じられない淡々とした口調。
何時も通りの用に聞こえるが、普段のソレとは何かが決定的に欠けている声にセイバーは気付いた。
「“護衛”は?」
「少し眠ってもらっています」
「……そう」
微動だにせず天井を見上げていたタバサの眉がピクリと動く。
この時に始めて、タバサは部屋の近くにあった兵士の気配が感じられない事に気付いた。
何時もならば、こういう時は自分の未熟さや迂闊さを反省するのだが、今は何故かそんな気にはならず―――それがとても不快だった。
「時間は取らせません」
これといって受ける理由もなく、断る理由もない。
「……好きにすればいい」
許可を出したのは、ただ、断る方が面倒だと判断したからだった。
部屋にセイバーが入ってきても、タバサはベッドの上から動くことはなかった。部屋に入ってきたセイバーは、ベッドの上に転がるタバサを見て一瞬顔をピクリと動かしたが何も言わず、無言のまま部屋の扉の前で腕を組んで立った。
暫らくの間、二人は無言であり、部屋の中に沈黙だけが満ちる。
先に沈黙を破ったの
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