第十五章 忘却の夢迷宮
第一話 定まらぬ未来
[8/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
微かに笑みを浮かばせたキュルケは、タバサと同じようにロマリア軍の兵士を後ろに貼り付けて歩いて行くセイバーの背中に礼を言った。
セイバーの姿が視界から消えると、視線を外へ。外へと向けた視界に映ったのは、足を掴まれ何処かへ引きずられていく士郎と引きずっていく凛の姿。背中を冷たい冷や汗が流れるのを感じながら、逃げるように視線を外から外すと、先程から動いていないルイズへと視線を向けた。
「本格的にやばいわね……で、結局あなたがそんな風にいじけてる原因はやっぱりあの人のことでしょ?」
「……そっちはどうなのよ。気にしていない風にしてるけど、本当は大分余裕がないでしょ」
キュルケは先程までタバサが座っていた場所まで歩いていくと、膝を抱えて座っているルイズを見下ろした。
「あら、良く分かってるじゃない」
「分からない筈ないじゃない」
意外そうに目を丸くしたキュルケに向けていた噛み付くような視線が弱々しくなる。
「―――わたしだって同じなんだから」
「……そっか」
キュルケはゆっくりと床に腰を下ろし膝を抱えると、ルイズの背中にそっと寄りかかった。
「ルイズ、あなたミス・トオサカのこと知ってた?」
「……少しだけ」
「同じね。実はあたしも少しだけ知ってるのよ」
「そう、なの?」
「ええ。まあ、知ってるとは言っても精々あの人が、シロウの大切な人だってことぐらいよ」
顔を合わせない背中越しの会話が一瞬だけ止まる。
「……わたしの知ってる事もあなたと変わらないわ」
「怖い?」
背中に震えを感じる。
キュルケはそれが自分のモノなのか、それともルイズのモノなのか分からないまま問い掛ける。
「あなたはどうなのよ?」
「怖いわよ。当たり前でしょ」
不安を紛らわせるように無意識に胸を抱えた両手が、妙に冷たく感じキュルケは僅かに苦笑いを浮かべた。自嘲気味の笑みを浮かべるキュルケの背中で、ルイズは力なく頭を垂れる。
「そっか、当たり前、なんだ……」
「そうよ。当たり前のことなのよ」
セイバーが現れた時にも感じた不安。
しかし、今感じているものはあの時とは違い強い焦燥感をもたらしていた。
それは何故か。
そんな事は、分かりきっている。
―――明らかにあの人はわたしたちの誰よりも士郎に近いと、そう感じてしまうから……。
―――痛い。
――痛い。
―痛い。
痛い―――ッ。
キュルケたちの前から逃げるように外へ出たタバサは、“護衛”の兵士を振り切るかのように駆け出し用意された宿舎の一室の中に飛び込んだ。後ろ手に荒々しくドアを閉め、勢いをそのままにベッドの上に飛び込む。ギシリ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ