第十五章 忘却の夢迷宮
第一話 定まらぬ未来
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れた事から始まった今回の一件。凛に捕まり文字通り踏みにじられていた士郎が、凛からの『あんたどういうつもり?』という問いに対し口にした言葉が寄りにもよって―――。
「それはまあ、『遊びじゃない、本気だっ!』って言ってくれたのは正直嬉しいだけど……空気というか自分の置かれた状況を冷静に考えて欲しかったわ」
「同感です。いくら追い詰められたからといってアレは自殺行為にほかなりません」
ようやくガンドによる死のダンスから解放された士郎がゆっくりと崩れ落ちていく姿を見てセイバーは頭を左右に振った。
「で、あれ本当に無事なのよね?」
「死んではいないと思いますが……」
「死んではいない、かぁ……無事とは言わないのね」
セイバーの微妙な言い回しにキュルケが本格的に救出について考えていると、ふと今の自分達が置かれた現況を顧みて小さく口元を綻ばせた。キュルケの微笑みに気付いたセイバーが、訝しげに眉根を寄せる。
「キュルケ?」
「ん? ちょっと、ね。今の状況を改めて思い直していたのよ」
「そうですね。あれからまだ二週間程しか経っていませんが、随分遠くまできたものです」
空を仰いだセイバーが感慨深げに言葉を漏らすのを横目に見るキュルケの目が呆れたようにジト目となる。
「……その最大の功労者が何を言ってるのよ」
アクイレイアで教皇が“聖戦”を発動してから二週間程で、ロマリア軍がガリア王国の首都に近いこのカルカソンヌまで侵攻出来た最大の理由は、この戦争の引き金となった両用艦隊であった。
ロマリアに攻め込んだ両用艦隊を率いるクラヴィル卿は、“聖戦”の発動と艦隊の予想外の損害、更には実質的な指導者であったミョズニトニルンの敗北を受け、完膚なきまで戦意を失うことになった。一つでも十分過ぎるショックを連続で三つも受けたクラヴィル卿の行動は、まさに疾風怒濤の勢いであった。生き残った艦隊を率いて直ぐさまサン・マロンへと取って返したクラヴィル卿は、艦隊の全将兵に対しジョゼフの陰謀を打ち明けると共に、ロマリアへ恭順する旨の意志を伝えた。
この提案をした際、実の所クラヴィル卿は半分が賛成すれば良い方だと考えていた。
クラヴィル卿は自分が才も実力もある方だと思ってはいない。精々誇れるのは経験だけぐらいと分かっていた。そんなカリスマも何もない凡庸な自分がいくら王からの命令とはいえ信じるべき信仰の中心地へと攻め込み。旗色が悪くなったから寝返ると言っているのだ。自分に賛成を示す者が半分もいないだろうと内心で考えていたのだが。
結果としてクラヴィル卿の提案に艦隊の乗組員たちから反対の声は一切上がる事はなかった。
その理由は何げにクラヴィル卿の指示が篤かった事や、元々この作戦に対し思うところがあ
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