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剣の丘に花は咲く 
第十五章 忘却の夢迷宮
第一話 定まらぬ未来
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 だからこそ、自分は仇を―――父を、|自分〈シャルロット〉を殺し、母を狂わせた男に―――。

「復讐だけが、あなたの未来ではありません」
「―――ぁ」

 セイバーへ向ける筈だった言葉が、力なく零れ落ちた。
 穏やか、とも呼べる優しげな目をしたセイバーが、一歩、タバサに歩み寄る。

 言葉に含まれていたのが批難なら、無視できた。

 ―――怒りなら、反発することができた。

 ―――悲しみなら、耐える事ができた。

 ……でも、優しさは、どうすればいいか、分からない。

「っ」

 逃げるように、タバサはセイバーから離れるように身体をずらす。
 
「タバサ。もう一度言います。過去は変えられません。しかし、未来は変えることが出来ます」
「……」

 反発の声は、上がらなかった。
 ただ、揺れる瞳で、セイバーを見上げるだけ。
 暫く、二人の間に沈黙が満ちた。
 そして、 

「復讐は止めろ、と……そういうこと?」

 最初に沈黙を破ったのは、タバサであった。
 その声には、不満や苛立ち、怒り等が多分に含まれていた。
 仮に、タバサの言葉にセイバーが頷けば、二人の間に決定的な溝が生まれていただろう。
 しかし―――

「違います」
「―――ぇ?」

 そうはならなかった。
 気の抜けた、幼いともいえる呆けた声をタバサが上げると、セイバーは小さく口元に笑みの形を取り顔を俯かせた。
 その時セイバーが浮かべた笑みは、タバサの漏らした呆けた笑みに向けた微笑ましいものではなく。決して忘れることのできない自分の|過去〈罪〉を思い出したことからの自嘲の笑みであった。

「私にそれを言う資格はありません。ただ、私があなたに伝えたかったのは―――」
「……ぁ」

 伸ばされる手。
 優しげな笑みと暖かな眼差し。
 頬に触れた指先は、赤子を撫でるように柔らかく。
 囁かれた言葉は、

「あなたは、一人ではありません」

 とても、強かった。 













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