第十五章 忘却の夢迷宮
第一話 定まらぬ未来
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“カルカソンヌ”という人口二千人程度の都市がある。
ガリア南西部に位置するその“カルカソンヌ”は、王都リュティスから西へ四百キロ程度離れた中規模の城塞都市であり、規模だけで言うならば何処にでもあるような城塞都市であるが、他の都市にはない特異な形から、“セルパンルージュ”の異名を持っていた。長細い蛇のような幅五十メートル、長さ二キロにも及ぶ細長い崖の上に造られたこの街は、上空から見れば街に立ち並ぶ赤レンガの屋根が蛇の鱗となり、その異名の通り確かに巨大な赤い蛇のようにも見える。そしてこの赤い蛇は、都市が造られてから今までの間、幾度となく行われてきた亜人達の侵攻を防いできた歴戦の都市でもあった。
その亜人の侵攻を幾度も防いできた歴史あるこの都市に、
―――ッ、ドドンッ!!!
――ッドドドドドンッ!!!
―ドガガガガッ!!!
……ある意味では相応しい音が響いていた。
ドッゴォォオオオオンッ!!!
「ぎゃあああああああああああああああああああ」
そう、悲鳴と爆音である。
爆音が響く度に砕け散った敷石が混じる土煙を纏いながら、長細い街の真ん中にある目貫通りを一心不乱に駆け抜ける男がいた。
「待て待て待て待て―――ッちょっと待てぇええええええッ!!!!??」
男が走る速度は尋常ではない。
『駆ける』、と言うよりも『翔ける』という言葉の方が合う程である。そう、その速度は最早人に成し得るものではない。力強くありながら柔らかさを感じさせるその姿はまるで四足獣―――しかし何故か思い浮かぶのは肉食ではなく草食のそれを想像してしまう。
それは何故か?
答えは簡単である。
男が逃げているからだ。
怯え、悲鳴を上げ、逃げるために走っている。
だから例え男が百戦錬磨の戦士であろうと、思い浮かぶのは獲物を追いかける肉食獣ではなく、その逆、追いかけられ追い詰められている草食獣の姿。
では、草食獣である男を追いかける肉食獣は何か?
それは肉食獣よりももっと恐ろしいものであった。
異世界には“あおい”のもいるそうであるが、今男を追い掛け回しているのはもう一つの方であった。
それは―――
「これは流石にヤバイだろッ!!!」
男が一際強く足を踏み込む。
石畳が砕け男の駆ける速度が一気に上がる。
一瞬まで男がいた場所に、
―――ドンッ!!
黒い何かが高速で突き刺さり爆発が起きた。
衝撃が背中を打つのを感じながら、男は遥か後方にいるであろう相手に向かって大声で抗議の声を上げる。
「こんな街中でガンドを連発するなぁあああああッ!!!」
「あんたが大人しく死ねば何も問題はないのよッ!!」
「死ぬッ?! そんなものを街中で撃つなよッ!?」
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