第二幕その十
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「まあ今日は先生が来られるまではそこそこ繁盛していたから招かないでもいいけれど」
「繁盛するに越したことはない」
「そういうことよ」
老馬にも答えます。
「だからお招きしようかしら」
「お店の為に頑張ってるんだね」
「当たり前よ、お店にお客さんが来てくれないと」
それこそと返すお静さんでした。
「ご主人達も私も」食べられなくなるでしょ」
「君もなんだ」
「そう、私もよ」
他ならぬお静さんもというのです。
「困るからよ」
「普通にお池とかでお魚食べれられるよね」
「まあね、妖力を使って獲ることも出来るから」
「それでもなんだ」
「だって。お金がないとキャットフードは食べられないわ」
「君はそちらの方が好きなんだ」
「特に鮪のね」
またこのキャットフードのことを言うのでした。
「あれが食べられないから」
「それでなんだ」
「何よりもご主人達が困るじゃない」
「そういうことなんだね」
「そういうことよ、だからなのよ」
「君はお客さんを招くんだね」
「そうよ、ただ妖力を使うとその分お腹が減るのよね」
こうしたことも言うのでした。
「それでね」
「その分だね」
「食べてるのよ」
「お魚とかキャットフードを」
「そうしてるの」
「そうなんだね」
「そして夜はお酒を飲んで寝てるの」
大好きなこの二つをというのです。
「時々起きるけれどね」
「猫は夜行性だからね」
先生が猫のこの習性を指摘しました。
「だからだね」
「そうよ、まあ夜も寝るけれど」
「夜行性なのにね」
老馬は猫又のその言葉にあえて突っ込みを入れました。
「やっぱり寝るんだね」
「だって猫は寝る子よ」
先生のお言葉をそのまま使って老馬に返します。
「だからね」
「夜も寝るんだ」
「そうなのよ、私もよく寝るわよ」
「じゃあ今は?」
「ちょっと起きてるの」
そうした状況だというのです。
「お店のカウンターのところで寝ていてね」
「僕達が来たから?」
「そう、気配を感じたからよ」
今は人間のお顔なのでお髭はない筈ですが何故かお髭を生やしている感じで老馬に誇らしげなお顔で言うのでした。
「起きたのよ」
「妖力で?」
「妖力と勘よ」
「ああ、猫の」
「そう、猫の勘は凄いのよ」
そのことを胸を張って言うのです。
「もうお店に入る人が近くに来るとね」
「わかるんだ」
「その瞬間にね。しかも私は猫又だから」
「そこに妖力も加わって」
「余計にわかるのよ」
普通の、彼女から見ればまだ若い猫達よりも早く、というのです。
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