第一部
第五章 〜再上洛〜
六十四 〜人を想うという事〜
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しー」
「なるほど。それで、切り崩しを目論んだのだな?」
「そうです。……何太后と十常侍が手を組み、歳三殿を含めた諸侯に誘いの手を伸ばし始めたのです」
素性の知れぬ使者、そして董旻。
何太后が十常侍との権力争いに引き込むと見ていたのは、どうやら誤りであったようだ。
「月は陛下との関わりがある以上、抱き込めると。でも、それ以外の諸侯が何進様に合力すれば、武力では十常侍側に勝ち目はないわ。いくら恋や霞、閃嘩(華雄)達がいると言ってもね」
「ただですねー。どうやら、月さんと馬騰さんにつながりがある事までは調べが至らなかったようなのですよ。それもあって、お兄さんに目を付けたようですよ」
……随分と、甘く見られたものだな。
大方、地位や禄で抱き込めるとでも思ったのであろう。
あるいは、月を人質にして脅す、その程度は考えていたのやも知れぬが。
「だが、その目論見は外れた。それどころか、脅威になると考え始めた……そんなところか?」
「ええ。そして、歳三を上軍校尉や衛尉に任ずるよう、陛下を唆したという訳」
「待て、詠。あれは陛下ご自身がその場でお決めになられた事だぞ?」
「それが、そうではないのです。……どうやら、陛下がご就寝なされている間、その事を繰り返し枕元で吹き込んだ者がいる、と」
何者かが、陛下を操っていた、という事になるのか。
……何者かは、確かめるまでもあるまい。
そのような真似が出来る人物は、唯一人。
「そして、お兄さんの行動を監視し、麗羽さんのところに行くのを見計らっていた、と」
崔烈が踏み込んできたのは、まさに予定通りだった訳だな。
同時に月を太師という名誉職に祭り上げ、あわよくば私を亡き者にする。
「確かに悪辣だけど、あちこちで策が破綻しているのよ。歳三は、そんなに甘い相手じゃないのにね」
「自分で言うのも何ですが、お兄さんには風や疾風ちゃん達がついてますしね。十常侍さん達も、手こずった挙げ句に、お兄さんを遠くへ追いやるのが精一杯だったのでは?」
「冀州に置いたままでは、洛陽にも近いですし、短期間ながらも歳三殿が築き上げた基盤があります。これで終わりとは思えませんが、もう我らと魏郡は完全に関係を断ち切られます……。それだけが、無念です」
「……私とて、それは同じ。だが、後事を託すのは麗羽、それがせめてもの救いだ」
だが、皆の表情は曇ったまま。
「時に疾風。何進殿は如何なされておる?」
「はい。宮中に足繁く通われ、何太后に面会を試みておられるようですが……」
「医師に、体良く追い返されているのだな?」
「……ええ。それどころか、陛下へのお目通りも儘ならないとか」
「月は建前上、それはないみたいだけど……。太師が、多くの私兵を抱えているのはおかしいと騒ぎ立てられてはいるわ」
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