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至誠一貫
第一部
第五章 〜再上洛〜
六十四 〜人を想うという事〜
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処はするが、私とてそう若い訳ではない。それに、公平を期すという誓約に反する訳にもいかぬぞ?」
「わかっておりますが……。私とて、そうは我慢出来ませぬぞ」
 ここまで惚れられるのは無論、悪い気はせぬが。
 ……今少し、身体を鍛え直すべきであろうか。


 朝食後、書状を認める事とした。
 ギョウにいる愛里や元皓(田豊)らに、交州牧に任ぜられた事を知らせ、麗羽に引き継ぐ為の準備を進めるよう指示を出さねばなるまい。
 そう日数はかけられぬが、それでも準備を始めさせておくに越した事はない。
 認めるべき内容をまとめていると、疾風(徐晃)が入ってきた。
「歳三殿。宜しいでしょうか?」
「入れ」
「はっ。詠が参り、歳三殿に話があると申しておりますが」
「詠が?……ふむ、通せ」
「はっ」
 すぐに、詠が風と共に顔を見せた。
「忙しいところ悪いわね。少しだけ、時間を貰えるかしら?」
「構わぬ。……風に疾風がいるという事は、例の件だな?」
 三人が頷く。
「疾風。人払いをさせておけ、暫し誰も近寄らせるな」
「心得ております。既に、警護の兵に申しつけておきました」
「よし。皆、近くに寄れ」
 皆が、私の机の周りに集まる。
「ご指示通り、いろいろと情報を集めていたのですよ。疾風ちゃんや詠ちゃんと分担して」
「ボクは月の傍にいる事が多いから、風達とはまた情報が入る経路が違うけど。……ただ、持ち寄れば正確さは増す筈よ」
「どうやら、一連の出来事は全て、最初から仕組まれていた事のようです」
「……つまり、八校尉の辺りからか?」
「歳三殿の仰る通りです。確かに先帝は八校尉についてお決めになる前に崩御されましたが、その後の扱いをどうするかは宙に浮いたままだったようです」
「月を少府にしてこの洛陽に縛り付ける事には成功したけど、歳三や曹操のような地方にいる軍人にも手を打っておかないといずれ自分達に牙を剥く……そう十常侍らは恐れていた訳」
「ただし、皆さんを一度に洛陽に集める大義名分がありませんでしたから。それで、八校尉を利用したようですよー」
 勅命により呼びつけるとしても、各々には任がある。
 しかも我らを一様に集めるともなれば、新たな勅命を出す必要があろう。
 が、今上の陛下が正式な後継に定まるまで、皇帝の位は空白であった。
 八校尉は先帝の遺命である事は確かであり、十常侍らが利用を考えたのは当然とも言えるな。
「諸侯を呼び集めた上で、何進殿との関係を含め、敵味方を見定めるつもりだったようですが……」
「蹇碩はともかく、歳三や曹操、孫堅達が八校尉に任じた程度で、宦官達に膝を屈する訳がないのにね。その点で、奴らの認識は甘かったのよ」
「それに、陛下ご自身が、お兄さん達を権力争いの道具に使う事を忌み嫌っておられるようです
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