癡 翁
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こっちにいたほうが気楽てえば気楽だ。ばあさんがうるさい、同居したバカ娘夫婦は金のこと。それじゃあ、しょうがねえな。
啓子ちゃんが話しかけてくれたんだよ。いいね、ああした人であれば。
来はじめた最初は澄ましてさ。秋だったか。お高くとまって見せて。つーんと。美人だろ?目立つわな。廊下を通る時とか。体が大きいからね。70以上あるように言ってたから。俺と変らねえべか。おっかさんは事だ。
若くて大きな人が車椅子に乗っかって通れば嫌だって目立つさ。ジジイとババアが揃ってそっちを向くな、何だ何だてって。
それが、啓子ちゃんの方で遊びに来るんだ。年寄りしかいねえのに。
向こうだと障害者の集まりで、知的がほとんどだし話んなる相手がいねえんだな。でなきゃあ、ジジイババアの特養へ遊びに来る物好きもあるめえ。
ほかにいるよ?河合さんてって、俺とおなし後縦靱帯。まいんちこっちへ来ちゃお喋りして、夕飯時になると帰ってく人だね。
俺よか二十若いや。俺が特養、河合さんが若いてんで障害者ホーム。若いって、もう六十でババアみてえなもんだ。こっちい入るはずが若い人を入れる空きがないのやらって、障害者ホームで世話んなりながら待機してる。
啓子ちゃんは違うよ?入所じゃないから。
あの子は通い。3時のおやつで帰る。それから、月に数晩、ショートステー。
向こうの一番奥に見えるほうが障害者ホームになっててね?建物がひとつづきなだけで分かれてんだよ、年寄りと障害者に。障害者が、十室だったっけ、部屋があって、河合さんなんかが入ってる。啓子ちゃんがショートステーで泊まるのもあっち。
こっち方に近いホールがあんだろ?朝飯を食うと集まってくる。日中部屋にいちゃいけないんだとよ、障害者は。朝飯の後あすこに集まってゲームをしたりお絵かきをしたり。
賑やかだい、みんな来ると。「きゃあ!」だの「ぎゃあ!」だの、いちんち奇声が聞こえてらあ。たまに驚くような声を出すのがいるね。こっちに近いぶん聞こえっちまうんじゃ仕方がねえ。
であすこへ来る途中にへこんだスペースがあるんだが、へこんでて見えねえけんど、障害者食堂。入所も通いもそっちで食う。啓子ちゃん、河合さんもね。
こっちがわの特養にしたって似たつくりだな、もっと広いが。特養なら上の3階と4階にもある。3階と4階は全部特養。
待てよ?3階の一部がデーサービスになってたな。年寄りの通い。のんびり来て、風呂に入って昼飯を食って。茶飲み話をするやつもいりゃあ、カラオケを歌って帰るのもいる。暇をつぶしに来るんだね。ま、風呂に入れてもらうのが一番の目的だ。
障害者はこの2階オンリー。入所とショートステーをあわせて十人てとこかね。残りが通いの客だ、啓子ちゃんとおなし。通いを入れっと、さあ、二十人
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