第二十二話
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「……姉上」
呼ばれて小十郎の顔を見ると、眉間にかなり深く皺を寄せていた。
何だかそんなことを考えていたせいか、嫌な予感が拭えない。
これは怒ってる。極殺に切り替わる三歩手前くらいに怒ってる。
「今すぐお暇致しましょう」
「え、でもあと三、四日は静養って」
「あのような変態がいる場でゆっくりと休む事など出来ませぬ!」
話をしていくうちに極殺の一歩手前の状態になってしまった小十郎を見て、こうなってはもう私が何も聞かないと頭が痛くなってきた。
……利家さんも悪い人じゃないんだけども……着物さえ着てくれればなぁ……はぁ。
急遽出発することになったとまつさんに告げて、小十郎は今までの礼を丁重に述べていた。
「度重なるご無礼をお許し下さい。また改めて御礼に伺いたいと」
「小十郎、野菜送ってあげなよ」
「野菜を、ですか」
そう、野菜。うちの小十郎は畑を弄るのが趣味で、家庭菜園なんてレベルじゃないほどに広大な畑の管理をしてるんだよね。
伊達の食糧事情も小十郎が管理していて、何で竜の右目がそんなことやるのと聞いたこともあったっけ。
ちなみにその時の答えは、小十郎の生きがいでありますゆえ、だったような。
それもかなりいい笑顔で答えられて何も言えなくなっちゃったのを覚えてるよ。
「まつさん、うちの小十郎はね、奥州の野菜作りの名人なの。美味しいご飯の御礼に落ち着いたら野菜送るから楽しみにしててね」
そう言ってみると、まつさんは嬉しそうな顔をしてぽん、と手を叩いた。
「まぁ、それは嬉しゅうございます。犬千代様と慶次が食欲旺盛なれば、食材はいつも不足しておりますので」
犬千代様、という単語に小十郎は渋い顔をしていたが、世話になった礼だからと小十郎は必ず御送り致しますと述べていた。
「小夜さん、出て行っちゃうのかい?もっとゆっくりして行けばいいのに」
振り返ると出入口の前に、慶次と無理矢理着物を着させられた利家さんがいた。
利家さんは暑いと言って今にも脱ぎたそうではあったが、どうやら散々怒られた後のようで仕方なくといった様子で大人しく着物を着ている。
これには小十郎も眉間に皺を寄せていたものの何も言わずに視線を移しただけで、特に咎める様子は無い。
「利家さんもそういう格好してると男っぷりが上がるのに」
「そ、そうか?」
満更でもなさそうな様子の利家さんに向かってしゃもじが剛速で飛んでいく。
一体何処から取り出したのか分からないしゃもじをかわす間もなく思いきり顔面に食らって、
鼻血を噴いて倒れた利家さんを私や小十郎、慶次が顔を引き攣らせて見ていた。
「まぁ、犬千代様ったら」
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