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≪黒死病の叙事詩≫小話
アスナの憂鬱 その弐 没案 VSスバル
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スナは当時、不快感を覚えたものである。あの映画とは違って今は閑散としているけれども。

 ステージは店内の三分の一を占めるほどの大きさで、真昼間の今は酒場を盛り上げる歌手も演奏もなく、ただスポットライトとスバルがあるのみでアスナには目的が掴めなかった。そう思っていると、ステージ上のスバルが、役者顔負けの芝居がかった話し方で声を響かせた。

「上がって来いアスナ、こんな枯れた酒場でも、舞台だけは上々さ。使わない手は無い。そうだろう?」

 戯言を聞き流しながら、アスナはイヤリングを装備する。それとほぼ同時に、眼前に【スバル との1VS1デュエルが受諾されました】のメッセージとその下の六十秒のカウントダウンが出現した。アスナは敏捷度を用いてふわりとステージまで跳躍し、ステージに踊り()でスバルと相対した。視界のカウントはまだ五十秒もある。

 スバルはどう出るだろうか? アスナはほんの数十秒の猶予で作戦を組み立て始めた。一秒でも多く思考したものが勝てる。アスナにとってそれは一つの真実だった。スキルやレベル、相性などの数字的な見地だけが闘いのすべてではない。ヒューマンエラーは必ず起きる。駆け引きに完璧などない。どんでん返しは日常茶飯事……。

 アスナがスバルを見る。彼は、武器すら構えない。これを情報の出し惜しみとする。思考時間を与えない考え。あるべき情報だけでも思考しよう。彼の防具は皮装備、アスナの細剣で突破貫通できる範疇。ならば攻撃箇所を絞る必要はない。確かスバルは右利き、よって武器は右手。≪手甲剣≫の特性はクリティカルボーナス。正中線に沿った急所ポイントの内、胸だけは鉄製の防具で守られている。危険な箇所は≪頭部≫と≪喉≫と≪腹≫だろう。守るべきは喉と腹部、スバルもわざわざヒットの困難な頭部を狙うまい。仮に狙ったとしてもクリティカルが発生するほど深くは斬れない筈。初手はソードスキルを打つべき? 最も回避の困難な剣技(ソードスキル)……。三点の同時攻撃、

 ≪ここで終了。≫

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