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≪黒死病の叙事詩≫小話
アスナの憂鬱 その弐 没案 VSスバル
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 アスナの解は至ってシンプルだった。当初の目的どおり、スバルというプレイヤーを見極めることにした。スバルの武器は特性上、一撃で命の危険が発生するが、純粋な決闘(デュエル)ではアスナのほうに分がある。致命の一撃を回避することに専念しても、アスナの優位には変わりないほどに≪手甲剣≫という武器は難点が多い。武器ジャンルそのものに欠点が多いとまで言えよう。アスナはスバルとのデュエルを申し込んだ。スバルの方角から電子的な鈴の音が聞こえた。

 スバルの眼前にウィンドウが出現し、それを見ていたインディゴが苦々しい笑みを浮かべながら自身のウィンドウを素早く操作した。ゲーム特有の効果音を奏でながら、何かしらのアイテムがインディゴのグローブの上に落ちた。

 暫く彼女は惜しそうに掌を眺めていたが、踏ん切りのついたようにそれをアスナのほうにふわりと弧を描かせながら投げた。アスナが見ると、それは耳飾り(イヤリング)だった。

「それは面白い効果を持っていてね。≪犠牲者の喚声(かんせい)≫って言うアイテムなんだけど、≪最大HPの五割以上のダメージを一撃で受けたときダメージの一部を肩代わりする≫という効果があるのよ。場末の酒場での決闘(ごと)きで命を落としたくは無いでしょう? 保険にでも使うのをオススメするけど?」
「……そうですね。使わさせて頂きましょう」

 アスナはこのアイテムのことを知っていた。とあるモンスターのレアドロップで、増やそうと思えばいくらでも増やせる(たぐ)いの物ではあるが、そのモンスターの経験値効率が悪いので、市場に出回っている総数はかなり少ない。イヤリングを始めとする≪装飾品≫は基本的に何かしらの上昇効果を持ち、代わりに基礎的な攻撃力防御力をまったく持たないという性質がある。その方向性のためにか、効果はやや強力なものが多い。アスナの知識を参照すると≪犠牲者の喚声≫はその中でも頭一つ抜けた性能を誇るが、≪最大HPの五割以上≫≪肩代わりする≫などの制限やデメリットのために癖が強いと言える。かなり攻撃的なレイドボス以外では使用する機会はまずないだろう。

 逆に言えば、スバルの一撃はレイドボスの一撃に匹敵し、場合によっては命を盗られる可能性もあるということに他ならない。彼の連れでもあるインディゴから渡されるせいで、余計にそのイヤリングは気味の悪い真実味を帯びていた。

 ≪装飾品≫を一つ外すのだから、若干の弱体化は免れられないだろう。アスナが自身の変化後ステータスを計算していると、店内の奥で明かりが点いた。そちらを見ると、スポットライトを浴びるミュージシャンのようにスバルが立っている。其処はまさしく、ステージだった。アスナは昔見た西部劇のワンシーンを思い出した。酒場で無法者たちが踊り子を見ながら下卑た大笑いをするシーンだった。幼いア
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