第十八話
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戸惑っている。そりゃそうだ、私だってこんな反応見せられりゃ何があったんだ、って思うよ。
「まつの飯が美味いのは確かだが……何も泣かずとも……」
「だって、ここへ来るまでの間、雑草食べて凌いでたんだもの。
奥州には戻れないし、こんな美味しいご飯食べられたんなら思い残す事はない……うう……」
ついそんなことを言えば、三人は慌てて死に急ぐなと止めに入る。
だって、本当にご飯食べて天国が見えるってそうないもの。まつさんのご飯は私に天国を見せてくれたわ、本当に。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ。そんな死ぬみたいなこと言わないでさ……何か、あったのかい?」
慶次にそんな風に聞かれて、泣きながら私は素直に答えていた。
多分、慶次を始めとしてまつさんや利家さんが本気で心配してくれてる、ってが分かったからというのもあると思うけど。
「奥州にちょっとした事情があっていられなくなって、ほとぼりが冷めるまで放浪の旅をすることになって……
追手がかかって連れ戻されると困るから、一箇所に留まってるわけにもいかなくて……」
「……一体何があったというのだ」
流石に厳しい顔をされてしまったので、差し支えない程度に事情を話すことにする。
犯罪でもやって逃げてきたとか思われても困っちゃう。
やましいことは私は何もしてないし、寧ろやましいと言えばあちらの方だ。私に非はないもん。
「主に側室になれって迫られて、それが嫌で逃げてきました……
結構執念深いから、私に誰か相手でも出来れば諦めてくれるかなと、恋を探して各地を訪ね歩いてます」
「まぁ……それで奥州から」
少しばかり哀れむような目は多分同情じゃなくて共感してくれてるんだと思う。
同じ女として私の境遇を分かってくれてるんだと……まぁ、私は女とは言い難いけど。
「じゃあ、俺と恋すればいいじゃん」
「……適当な男連れて帰れば、きっと主と弟が二人がかりで切り倒しに来るだろうから。
納得させられるだけの相手じゃないと」
間髪入れずにそう言うと、慶次が撃沈とばかりにその場に転がっている。
だってねぇ、恋人にするのなら良いかもしれないけど、パートナーとなるとねぇ……。
ヒモにでもなられたら洒落になんないもの。そりゃ、慶次を養っていけるだけのお金は稼いでるけどさ。
専業主婦やるつもりもないから代わりに慶次に家を任せて、ってのもアリかもしれないけど、多分それじゃ小十郎や政宗様が許さない。
というか、姉が一番許してくれなさそう。きっと慶次は地獄を見るね。間違いなく。
「いくら女に選択肢がないからって、無理矢理側室に据えられるのは嫌だもの……
どうせなら、利家さんやまつさんみたいな夫婦になれるような人と結ばれたいもの」
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