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極短編集
短編15「シャボン玉」
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「パパ、今日は大丈夫?」

 遠くからお見舞いに来た小さな男の子は、病室でお父さんに聞いた。

「ああ、今日は調子がいいよ。ちょっと海に行こうか?」

 病院は海の近くで、歩いて海岸に行けた。男の子は手に、シャボン玉を持っていた。

「お前はシャボン玉が好きだね」

 お父さんは優しく笑いながら言った。

「ねえ見て見て、ボクの大きいよ」

 シャボン玉を膨らます我が子の姿を、お父さんは微笑ましく見ていた。

「ねえねえ、パパもシャボン玉やって!」

「ああ」

 小さい男の子から、お父さんはシャボン玉のストローを受け取ると、ふぅっとシャボン玉を膨らました。

「あっ飛んだ!」

 お父さんのシャボン玉は、どんどん高く浮かび上がった。
 小さな男の子もマネをして膨らましたが、一向に高く飛ばなかった。お父さんのシャボン玉を見た男の子は……

「どうしてパパのシャボン玉は高く飛ぶの?」

 と、聞いた。

「ああコツかい?コツはね、口の中で温めた息を吹き込むのさ」

 お父さんはそう言って、またシャボン玉を飛ばした。お父さんのシャボン玉は高く高く舞い上がると、海の彼方へと消えて行ったのだった。
 あれから数年がたった。小さな男の子は少年になった。今日は母の再婚相手と会う日だった。

「僕、行きたくないよ」

「でも、会うだけだから」

 少年は母親に連れられて行った。行った先は海だった。そこには先に来ていた再婚相手の男性がいた。

「初めまして」

 と、男の人は言った。少年は黙っていた。それから3人は黙って座り、海を眺めていた。
そこには波の音だけが響いていた。
 おもむろに男が、上着のポケットからシャボン玉を取り出した。ふぅっと膨らますと、シャボン玉はフワフワと浮かび上がり、高く上がった。

「あっ」

 少年は声を上げた。あの日、お父さんにシャボン玉の飛ばし方を習ったのを思い出した。あのあと何度も練習したが上手く飛ばなかった。次に会った時に聞こうと思った矢先、もう聞く事が出来ないのを知った。お父さんもシャボン玉のように消えていった。

「シャボン玉。……どうやって高く?」

 少年は男に尋ねた。男は優しく答えた。

「ああ、コツかい?コツはね、口の中で温めた息を吹き込むのさ」

 その言葉に、少年の目頭が熱くなった。懐かしい言葉だった。

「でも、でもダメだったんだよ!」

 思わず少年は、男に強く言った。男は真剣に少年の気持ちに答えた。

「それはね。吸い込んですぐの息だとダメなんだよ。口の中にある温かい息だけで膨らますんだ。そうすると高く浮かぶんだよ」

 男は丁寧に少年に伝えた。少年には、そんな男の姿が、在りし日のお父さ
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