第一部
第五章 〜再上洛〜
六十二 〜異変〜
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広さは望み得ぬかも知れぬが、せめてこの程度の融通は効かせるべき。
今更ながら、そんな事に思い当たった私である。
「うにゃー、ご馳走なのだ♪」
流石は袁家だけあり、鈴々に用意された食事はなかなかの物であった。
嬉々として平らげ始めた鈴々を横目に、斗誌と二人、茶を啜る。
この茶も、良い香りと、微かな甘みを感じる。
素人目に見ても、かなりの上物であろう。
「うむ、美味い」
「ふふ、良かったです。このお茶、麗羽さまもお気に入りなんですよ」
「……そうか」
恐らく、値も張るのであろう。
いくら師とは申せ、個人の嗜好にまで口を挟むつもりはない。
ただ、この上等な茶を喫するために、どれほどの庶人が苦しんでいるか……それは、身を以て知るより他にあるまい。
「そう言えば、麗羽は多忙のようだが?」
「ええ。親戚の方々とのお付き合いもありますし、夜は書物をお読みになっています。睡眠時間も、以前よりもかなり削っておられまして」
「ほう」
「剣の稽古もなさりたいご様子ですが……流石に一度には無理ですからね」
「その通りだ。如何に若いとは申せ、無理は感心せぬ」
「私もそう思うんです。麗羽さま、歳三さんに認めていただきたい一心で、焦っておられますから」
「……だが、やはり好ましくないな。戻ったら、一言申し聞かせておくか」
斗誌も、同意とばかりに大きく頷く。
「お願いします。私も心配なのですが、今の麗羽さま……ちょっと、鬼気迫るものがありまして」
「なるほど。斗誌や猪々子では、諫める事もままならぬ、か」
「……済みません」
落ち込む斗誌。
「いや、やむを得まい。お前も本来は武官、そこまで気を回せと申すは酷であろう」
「……はい。やっぱり、文官とか軍師とかも必要ですよね。最近、痛感しています」
「文官はともかく、軍師か……。こればかりは、募るより他にあるまい」
「そうですね。今度、稟さん達に相談してみます」
……む?
何やら、表が騒がしいようだが。
「何事か?」
「見て来ます」
斗誌が表に出て行くが、すぐに押し問答が聞こえてきた。
「鈴々。参るぞ」
「うー、まだ食べている途中なのだ……」
「後にせよ。お前は役目の最中なのだぞ?」
「わかったのだ」
未練がましく箸を置くと、鈴々は私の後についてきた。
「お引き取り下さい。此処を何処だと思っているのですか!」
「ふん、お前では話にならん」
門の中で、斗誌と壮年の男が揉み合っている。
「斗誌。如何した?」
「出てきたな、土方」
男が合図をすると、数十名の兵が私を取り囲んだ。
「貴殿は?」
「私は崔烈。太尉を仰せつかっている」
「これはお初にお目にかかります。して、これは何の真似にござる?」
「惚けるな! 偽校尉
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