第一部
第五章 〜再上洛〜
六十二 〜異変〜
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判断が鈍る」
「そう言われても難しいのだ……」
「自然体でいれば良い。鈴々程の達人であれば、勘も研ぎ澄まされている故、咄嗟の事にも身体が反応する筈だ」
「そうなのか?」
「ああ。私の経験則から導き出した事だ。信じられぬか?」
「ううん、お兄ちゃんがそう言うなら、きっと間違いないのだ!」
鈴々から、力みが抜けたようだ。
「いいぞ、それで良い」
「にゃー、お兄ちゃんに褒められたのだ♪」
……少々、力みが抜け過ぎやも知れぬな。
だが、幸か不幸か、その後も妙な気配は感じられぬままであった。
「申し訳ありません、麗羽さまは親戚筋の方々との晩餐会に出席されていまして」
麗羽の宿舎に無事に着いたものの。
留守居をしていた斗詩が、恐縮したように頭を下げる。
「すぐには戻らぬのか?」
「はい。つい半刻程前に、文ちゃんを連れてお出になったばかりですから」
「そうか……間が悪いな」
「あの……。何か急な御用ですよね?」
窺うように、斗詩は私を見た。
「急は急だが、やむを得まい。戻り次第、私のところに知らせてくれぬか?」
「わかりました。では麗羽さまには、確かにお伝えします」
無駄足であったか。
そう思い、私は踵を返した。
「あ、歳三さん」
「斗詩、何か?」
「お急ぎかとは思いますが、お茶でも召し上がりませんか?」
「一息入れよ、と申すか?」
「そうです。歳三さんがいらしたのに何のおもてなしもしなかったら、それこそ麗羽さまに叱られますし」
「それはわかるが……」
「麗羽さまにはすぐに使いを立てますから、もしかしたら戻られるかも知れませんよ?」
麗羽の事だ、斗詩の申す通りやも知れぬな。
「鈴々、良いか?」
「お兄ちゃんに任せるのだ。斗詩、出来たら何か食べさせて欲しいのだ。鈴々、お腹空いたのだ」
「う、うん……」
斗詩の顔が引き攣っているようだ。
「鈴々、程々に致せよ?」
「わかってるのだ! でも鈴々は食べ盛りだから、お腹が空くのは仕方ないのだ」
「あ、あはははは……」
……後で今一度、釘を刺すとするか。
「ところで斗詩。つかぬ事を聞くが」
「あ、はい。とりあえず、中に入ってからにしませんか? 立ち話も何ですし」
「わかった。済まぬが、兵にも茶を頼む」
と、兵らがざわめいた。
「土方様、我らは役目でお供しています。どうか、お気遣いはご無用に願います」
「良い。急に供を申し付けたのだ、気にする事はない」
「し、しかし……」
規律を気にしてか、やたらと兵らは尻込みをする。
「私が許す。それならば良かろう?」
「……では、お言葉に甘えて」
兵らに頷き返し、私は中へと入る。
規律は必要だが、細々と口を挟むのは好ましいとは言えぬ。
……私には、近藤さん程の懐の
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