第一部
第五章 〜再上洛〜
六十二 〜異変〜
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「ほう、なかなかに耳が早いな」
「ああ、立子(鳳徳)が調べて来たのさ。あたしんトコで、そんな芸当が出来るのはアイツぐらいなんでな」
「成る程。それで、私に聞きたい事は何だ?」
「実は、こんな文が投げ込まれていてな」
と、馬騰は紙片を取り出した。
「読んで構わんのか?」
「勿論だ」
「では、失礼します」
稟がそれを受け取り、私に手渡す。
広げると、このような事が記されていた。
『西園八校尉を形骸化させ、陛下から切り離そうと画策するは少府なり。その親を自称する土方なる素性の知れぬ者もまた、怪しむべし』
差出人の署名は……ないな。
「ふむ。今度は私までも巻き込むつもり、という事か」
「……前にも話したけど、月はあたしに取っても他人じゃない、家族同然の存在だ。その親を務めるアンタも、当然他人とは思えないさ」
「……だが、この怪文書の主は、それを承知で馬騰の宿舎に投げ入れたという事になるな」
「正直、意図が見えないのさ。あたしが月や土方に疑念を抱く事はあり得ないだろ? だいたい、こうして見せる事もわかりきってると思うんだが」
「……うむ。稟、風、どう思う?」
「そうですね。この怪文書が、果たして馬騰殿のところだけに投げ込まれたものでしょうか?」
稟が、宙を睨みながら言う。
「風も同感ですねー。恐らくですが、曹操さんや袁紹さん、孫堅さん達のところにも行っているかと」
「いえ、八校尉の方々だけとは限りません。洛中の各所にばら撒かれている可能性も否定出来ません」
「土方、あたしの他から知らせは来ていないのか?」
「来ていれば、中身を改めるまでもあるまい。どのみち、同じ内容が記されている筈だからな」
馬騰と馬超が、顔を見合わせた。
「母様。一体、どういう事だ?」
「あ、あたしに聞くな馬鹿娘。少しは自分で考えろ」
「馬鹿とは何だよ馬鹿とは!」
……似た者同士と申すか、何を言い争っているのやら。
「歳三様。すぐに確認を取るべきかと」
「まずは、袁紹さんのところでしょうかね。お兄さんに隠し事は出来ないでしょうし、あの方なら」
「そうだな。風、麗羽に……。いや、私の方から出向くか」
「お兄さん。おわかりとは思いますがー」
「……誰ぞを伴え、と申すのであろう? だが、その前にやっておくべき事があるな」
「疾風と星ですね。では、そちらの方は私から伝えておきます」
稟は立ち上がり、部屋を出て行った。
うむ、以心伝心だな。
話が早くて助かるのは事実だが……馬騰らが、呆気に取られているようだ。
「なぁ、今ので通じたのか?」
「そのようだな」
「立子も察しの良い方だけどさ。軍師って、皆ああなのか?」
馬超がそう言うと、風が口に手を当ててほくそ笑んだ。
「お兄さんと風達の場合はちょっと違うかも知
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