生死乱れる紅の狂宴
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この世に人として生を受けた以上は、両親という存在に関わらずにいるなど到底無理な話。麗羽も例外なく、父と母が居なければ生れ落ちてすらいないし、例え人形のように命令されるだけであろうとも、関わり合いは確かにあった。
目の前で鞭打たれている二人からの視線は憎しみを映し出し、とても親が子に向けるモノとは思えない。
対して、未だ上位に立っている気の両親に返す麗羽の視線は穏やかに過ぎた。
その微笑みが、余裕のある仕草が……さらに親の心を苛立ちに染め上げていた。
「血の裏切り者め。人としての誇りさえ捨て去ったお前が……今以上に人を外れるつもりか、麗羽」
蔑みは真名を民にまで開示した彼女の異端さを突いて。この世界に生きる者ならば、神聖なる真名を顔も知らない他人に捧げる行いをした者は、犬畜生と変わらなくすら感じられる。だから麗羽の父は侮蔑を吐き捨てた。
その昏い声が耳を擽り、麗羽は思う。
――嗚呼、なんて足りない……
侮蔑では怨嗟に届き得ない。彼女を壊すに届かない。威圧も優越も何かも、彼女を怯えさせるにはもはや足りなさすぎる。
片目だけ細め、麗羽は不敵に笑った。
「申し訳ありませんお父様。わたくしは歴史上でも一番の親不孝者です」
「当然だ……が、何故笑う? 真名を捧げてイカレたか」
「いいえ、感謝しているのです。あなた方がこの世界にわたくしを生み出してくださったからこそ、わたくしはわたくしだけの天命を手に入れた」
「ハハッ! 天命……だと? 片腹痛いぞ麗羽! お前は曹孟徳と黒麒麟の操り人形になっただけであろうが! 所詮我らがお前を使ってやっていた時と変わらん! 貴様など、何処まで行ってもただの人形に過ぎんのだ! ハハッ!」
愉悦と見下し、そうする事によって従えて来たから、袁家の前当主はからからと笑う。
やっと手に入れた地位で、力。自分も同じように人形だったからこそ分かる。そうして……人は最も憎んだモノになって行く。
「お〜っほっほっほ!」
その愉悦を、麗羽の高笑いが呑み込んだ。
困惑と疑念が綯い交ぜになった表情で親は彼女を見つめた。
分かるはずも無いか、と麗羽は笑いながら思う。
「ふふっ、軛が外れたわたくしにはこの世界が美しくて仕方なく見えます。
縛り付けられた籠の中から見る世界は醜悪で、其処からすればこの世界は随分と美しい。己が幸福の為に乱世を広げるなど……とてもではないですが思えません。
今思えば、華琳さんだけは違う世界を見ていたのでしょう……野心と呼ぶには綺麗過ぎる想いが彼女を覇王へと導いたのですから。学生時代の時点でわたくしの敗北は確定していたんですわ」
目の前に華琳が居るならこんな事は言わない。
こんなに素直に本心を零してしまうのは、やは
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