第一部
第五章 〜再上洛〜
六十一 〜魑魅魍魎〜
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、それを言うならば、陛下自らが不適格と仰せられる事自体、異例であろう。
「やはり、杜若(協皇子)に禅譲すべきであろうな?」
「ですが、その前に何とかしなければならないのが……」
「母上と、十常侍か……」
何太后が宮中に上がるにあたり、尽力したのも十常侍。
後継争いで対立関係にこそなったが、それでも両者の関係が切れた訳ではないらしい。
……だが、何進が決意通りに動けば、どうか。
後ろ盾のない何太后には、もはや利用価値はないとみなし、十常侍が切り捨てる可能性が高い。
「陛下。これより太后様と話をして参ります」
「伯父上。しかし、その怪我で無理はならぬ」
「いえ。もはや、一刻の猶予もないという事。十常侍らも、まさか立て続けに宮中で狼藉は働きますまい」
「しかし……」
陛下は、不安の色を隠せぬようだ。
その眼が、私を捉えた。
「その方、土方と申したか?」
「はっ」
「伯父上。八校尉は、朕自ら指揮出来る存在であったな?」
「いかにも」
「ならば、土方に命ずる。伯父上が屋敷に戻られるまで、警護をせよ。その間、片時も離れる事は許さぬ」
「片時も、でござるか」
「そうじゃ。後ろに控える二名も同道せよ」
陛下のお言葉に、二人は流石に戸惑いを隠せぬようだ。
何進がそれを見て、
「陛下。恐れながら張遼は官位も低く、関羽は官位を持たぬ身。土方とて、本来であればここまで連れてくる事も憚られる身分ですぞ。如何に陛下の御意とは言え、これより更に奥に連れ行くのは」
「ならば、朕の一存で勅令を与える。土方、その方を上軍校尉並びに衛尉に任ずる」
……これはまた、破格の大出世だな。
上軍校尉というだけでも異例だが、衛尉は確か、九卿の一つと以前、稟より聞かされた記憶がある。
「張遼と関羽は、それぞれ長楽衛尉、甘泉衛尉とする。詔は今、用意させよう」
「お待ち下され」
「何だ、不服なのか?」
陛下は、意外そうに目を見開かれた。
「いえ。そのご沙汰、永世のものにござりまするか?」
「そこまでは考えておらぬがの。伯父上が頼みとするその方ならば、それでも構わぬぞ」
「恐れながら、この場限りのご沙汰という事であれば謹んでお受け致しまする。ですが、永世のもの、とあらばご辞退申し上げる他ござりませぬ」
「何故じゃ? その方、出世を望まぬと申すか?」
それもあるが……流石に口には出せぬ。
「そのご沙汰に見合うだけの働きをした訳ではござりませぬ。それで出世を遂げれば、世人は何と見るでしょうや」
「…………」
「陛下と、何進殿の身びいきによるもの、そう見ましょう。陛下のご威光にも差し障ります」
「朕の事など気にせずとも良いが」
「そうは参りませぬ。今は斯様な時、ご沙汰も慎重を期していただかねばなりませぬ」
「……伯
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