第一部
第五章 〜再上洛〜
六十一 〜魑魅魍魎〜
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ると、何進は左腕を吊っている。
その腕は、朱に染まっていた。
「何進殿。ご無事でしたか」
「おお、土方か。この通りだ、少しばかりやられたがな」
そう言って、何進は微かに顔を顰めた。
「お怪我を?」
「まあな。立ち話も何だ、中へ入るといい」
まるで、我が家であるかのように、何進は気安く言った。
「か、閣下。恐れながら」
件の兵が、恐る恐る食い下がろうとする。
が、何進は一瞥すると、
「張譲が何を言ったかは知らんが、土方は歴とした朝廷の臣だぞ。それでもまだ邪魔をするつもりか?」
「い、いえ……。しかし……」
「まだ不服か? ならば陛下にお目にかかり、許しを得て参れば良いのだな?」
何進が踵を返すと、兵らは慌てふためいて、
「お、お待ち下さいませ! 只今、確認を」
「良い。あのタマなし共にいちいち伺いを立てていたら日が暮れる。文句があるなら俺に言え、と伝えておけ」
「は、はぁ……」
どうやら、食い下がっても無駄と諦めたらしい。
「土方、行くぞ。張遼と関羽も参れ」
「ええんか、ウチらも?」
「そうです。霞はともかく、私など官位を持たぬ身ですが」
「構わんさ。どうせ、すぐそこに行くだけだからな」
思わず、二人と顔を見合わせてしまう。
今の何進からは、悟りにも似たものを感じる。
……これが、不吉の前兆でなければ良いのだが。
すぐそこ、と言う割には、宮中のかなり奥深くまで連れて行かれた。
途中、何度も衛兵が立ちはだかるが、何進は誰何すら許さぬ。
警備の厳重さからして、容易に立ち入れる場所ではないようだが。
「何進殿。何処まで行かれるおつもりか?」
「知りたいか? まぁ、着いてのお楽しみという奴だ」
怪我をしているとは思えぬ程、何進は意気軒昂である。
そして、一室の前で立ち止まった。
「此処だ。さ、入れ」
「……何進様。中に、何方かおられるようですが」
「せやな。殺気は感じへんけど……」
愛紗と霞の申す通り、先客が居るようだな。
「流石だな、気付いたか。だが、心配は要らんぞ?」
笑いながら、何進は部屋へと入った。
当人がそう言うのであれば、危険はあるまい。
尤も、仮に何者かが潜んでいたとしても、愛紗と霞に太刀打ち出来る訳もないのだが。
……確かに、心配は無用であった。
「何進様、お父様。お待ちしておりました」
「……月。何故、此処に?」
「それは、これからお話しします。何進様、痛みますか?」
「いや、かすり傷だ。それより、刻が惜しい。連れてきてくれたか?」
「は、はい」
衝立の向こうに、人の気配がするが……誰だ?
「伯父上」
「お待たせしましたな、陛下」
陛下、だと?
いや、しかしこの声は……聞き覚えがある。
衝立から姿
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