2部分:第二章
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第二章
「聖水もあるし」
「フル装備か」
「これだけあれば大丈夫だよ」
こう言ってだ。平然とした顔をしている。
「だから僕は平気だよ」
「そんないる筈もないものに備えてどうするんだ」
「いるでしょ、多分」
晃はいぶかしむ顔になった兄に述べた。
「幽霊はね」
「宇宙人はいるさ」
ここでもそれはいると主張する玲だった。
「広い宇宙だ。俺達以外の知的生命体は絶対にいるさ」
「そうだよね。そうした存在はね」
「ネッシーもいるさ」
UMAについても存在を認める。
「まだ見つかっていない生物なんてそれこそ山程いるさ」
「だからネッシーもなんだ」
「恐竜とは限らないだろうけれどな」
だがそれでもだというのだ。ネッシーもいるというのだ。
「それでもいるだろうな」
「ネッシーは認めてもなんだね」
「幽霊はいるか。いる筈がないだろ」
「だからここでもだね」
「いるか、そんなの」
そしてだ。ひいてはだった。
「心霊写真だってな」
「映る筈がないんだね」
「それで幽霊がいないって証明してやるさ」
彼自身の行動、それによってだというのだ。
「大体この神社で何で幽霊が出るんだよ」
「前の神主さんの奥さんらしいよ」
「前の?」
「うん、何でも戦争の時にさ。ここにアメリカ軍の戦闘機が来て」
制空権はなくなっていた。アメリカ軍の艦載機がしょっちゅう来てそれでだ。機銃掃射をひっきりなしに加えてきていたのである。
「それに撃たれて」
「死んだんだな」
「で、その人が幽霊になったんだって」
晃はこう兄に話す。その木の多い神社の中で。神社の境内の中は広く紅い鳥居が道に連なっている。二人はその中を潜りながら話をしているのだ。
その中でだ。弟はまた兄に話す。
「そうらしいよ」
「死んだ人は可哀想だな」
玲はその白い顔を暗くさせて弟の言葉に応えた。
「けれどそれでもな」
「幽霊はなんだ」
「ああ、いない」
あくまでこう言うのだった。
「いる筈がないだろ」
「それじゃあさ」
しかしだった。ここで晃はだ。
目の前の境内を指差してだ。兄に対して尋ねた。
「あそこにいる人誰かな」
「何だよ、目の前か」
「うん、目の前にさ」
そこにいたのはだ。何とだ。
頭から血を流しているもんぺ姿の女だ。その人を指差しながら兄に問うのである。
「誰だと思う?」
「仮装か。面白い仮装だな」
「今自分に嘘吐いてるでしょ」
「いや、仮装だろ」
あくまでこう言い張る玲だった。
「あの人は」
「けれど影がないよ」
見れば実際にだ。そのもんぺの人には影がなかった。
「しかもだよ」
「しかも。何だよ」
「顔真っ白だし何処か透き通ってるし」
晃はそのことも話す。
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